こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

王の願い ハングルの始まり

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すべての国民が理解できるやさしい文字を作りたい。そう願う王は、その知識を持つ男たちをひそかに王宮に迎え入れる。彼らの身分が低いのは知っている。それでも王は、命令するのではなく協力を求める。物語は、中国文化に支配されていた時代の朝鮮、知識人しか読めない難しい漢字ではなく、平易な文字を新たに創作し普及させようとした王と研究者たちの苦難を追う。複雑だが一目で意味が分かる漢字は支配階級の武器だった。そんな現状に対し、話し言葉の発音を分析・分類して簡単な記号で記すのは画期的。中華辺縁部族の文字にヒントを得て独創的な文字を考案していく過程は、一方で被差別宗教僧侶の抵抗でもある。儒教が単に道徳倫理の範を垂れるだけでなく統治の道具であったことが強調されるのは、いまだ韓国社会にその影響が根強く残っているからだろうか。

多言語に精通した仏教僧侶・シンミと彼の部下を招へいし、新たな表音文字の開発に乗り出した世宗。側近の高官たちはみな儒者ゆえに、シンミたちの作業は極秘プロジェクト扱いだった。

“先代王の約束を守れないとあれば、文明国の名折れ”。前半、日本から来た僧侶たちが「大蔵経」の版木をもらい受けに来るが、世宗はあっさりと反故にする。「慰安婦合意」同様、先代の最高権力者の約束など現政権は関知しないという態度。まさか、文在寅大統領が日本との決め事を守らないのは、世宗を意識してのことなのか。。。彼らの研究は様々な障害があったものの、王妃の理解もあって11母音28子音の体系が出来上がる。その際、朝鮮語の発音と文字との関係が分かりやすく解説されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

苦心の末、シンミたちは文字を完成させる。記号をまとめると意味と発音が一目瞭然で、世宗も納得する出来栄え。ところが、普及させる段階で、世宗は儒者から強烈な反対を食らう。特権階級を特権階級たらしめる漢字と知識。そんな彼らから、新文字を守り抜こうと決意するシンミたち。教科書的な内容の教科書的な作品だった。もちろん韓国政府検定済みの。

監督  チョ・チョルヒョン
出演  ソン・ガンホ/パク・ヘイル/チョン・ミソン/キム・ジュンハイ/チャ・レヒョン/タン・ジュンサン
ナンバー  117
オススメ度  ★★*


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