こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

すべてが変わった日

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断固とした態度で己の決意を表明する妻と理性的な判断を下そうとする夫。一族の長として絶対的な権力をふるう母と彼女の顔色をうかがいながら命令に従う男たち。愛情と恐怖、どちらの家族も決定権を握っているのは女だ。物語は、一人息子に先立たれた老夫婦がDV継父に連れ去られた孫を取り戻そうとする過程を描く。法的に親権は相手側にある。ただ一度目撃した妻子への暴力だけが妻の根拠。でもその直感が正しいと彼女は信じている。夫もまた、妻には物事の本質を見極める眼力があるのを知っている。まだネットもデジタル機器もなかった1960年代、老夫婦はわずかな情報を頼りに人探しをする。彼らがステーションワゴンでひた走る道中、米国のだだっ広い荒野を貫く一本道が印象的だった。

小さな牧場で息子夫婦・孫・ジミーと同居するジョージとマーガレット。息子の事故死から3年後、嫁・ロニーは他の男と子連れ再婚。ところが彼らはジョージたちに行き先も告げず姿を消す。

マーガレットはロニーとジミーが虐待されていると確信、ジミーだけでも引き取りたいと願う。法執行官だったジョージはよその家族の事情に介入するなど独善と取り合わない。ひとりでもジミーを取り返しに行くと荷物をまとめるマーガレットを止められず、ジョージはハンドルを握る。実際この時代にこれほどまで自我を貫き通す女性は珍しいとは思うが、“祖母の孫への愛情” という設定に21世紀のジェンダー視点が違和感なく盛り込まれていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ロニーとジミーは人里離れた屋敷に住むブランチという女家長が支配する家族とともに暮らしている。ブランチは女王のごとく振る舞い、気の強いマーガレットと壮絶な火花を散らす。ジミーのおかれている環境を知って、ジョージは男としての責務を果たそうとするが、彼以上に断固とした意志を貫くマーガレット。カルト集団的なブランチ一家の登場でホラー的な趣も増し、ますます先の展開が読めなくなる。男が強いのは腕力だけ、もはや男は女に従い守られる存在になり果てたのか。。。

監督  トーマス・ベズーチャ
出演  ダイアン・レイン/ケビン・コスナーケビン・コスナー/レスリー・マンビル/ケイリー・カーター/ウィル・ブリテン/ジェフリー・ドノバン/ブーブー・スチュワート
ナンバー  114
オススメ度  ★★★*


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