こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

少年の君

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優等生だからなのか、家庭環境ゆえなのか、それとも孤高を気取る態度が原因か。3人組に目をつけられた女子高生は執拗ないじめにあい、学校に居場所はない。そんな時出会った傷だらけの不良。物語は、大学受験を控えた少女と社会の底辺で生きる少年の友情を描く。警察は親身なフリをしてプライベートに踏み込んでくる。先生たちは事なかれ主義。少女の保護者は出稼ぎから戻らない。少年はもともと身寄りがない。少年は少女の護衛となって少し離れたところから彼女を見守る。信頼できるのは自分たちだけ、ふたりは肉体的な傷をだけでなく心の傷も癒し合う。恋なんかじゃない、ただ助け合わなければ生きていけないだけ。それでも、身を寄せ合ううちにお互いがお互いにとってかけがえのない存在に思えてくる。彼らの寄る辺なき感情が切なかった。

いじめを苦に飛び降り自殺した生徒に上着をかけてやったニェンは新たなターゲットにされる。下校時、チンピラにボコられていたシャオベイを見かけ通報、壊されたスマホを修理してもらう。

入試まであと数十日しかない。勉強に専念したいのに、3人組が絡んでくる。シャオベイのおかげで少し安心していられるが、平穏な日々は続かない。シャオベイがこう留されている間にまた襲われたニェンはリンチされた上に髪まで切られる。日本では、有名大学を目指す進学校に通う生徒たちならここまで暴力的にはならないが、中国はスケールが違うのか。そもそも、出身大学で将来がほぼ決まる中国社会では生徒も先生も受験に対する熱意が違う。21世紀の経済成長は厳しい競争の成果なのだ。“ゆとり” で地盤沈下した日本はもう一度教育制度を見直すべきだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

試験の日、いじめグループの一人が死体で発見される。ニェンとシャオベイは共謀し、秘密を守ると誓いを立てる。ところが、中国の警察は犯罪を絶対に見逃さないと検閲で指摘されたのか、非常に不快な結末を迎える。さらにエンドロールのプロパガンダ。美しい作品が当局に汚されてしまった。

監督  デレク・ツァン
出演  チョウ・ドンユィ/イー・ヤンチェンシー/イン・ファン/ホアン・ジュエ/ウー・ユエ/ジョウ・イエ
ナンバー  133
オススメ度  ★★*


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