こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

うみべの女の子

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好きでもない男子とセックスしてしまった。ちょっと出血しただけで痛くはかった。彼とはそのままだらだらと関係を続けるが、キスはさせない。物語は、小さな海辺の町で暮らす女子中学生の性を描く。彼に求められれば相手をするし、自ら彼の部屋に押し掛けることもある。特に孤独を感じているわけではない、愛情に飢えているわけでもない。覚えてしまったセックスの快感を求めているわけでもない。自分の気持ちがわからない、勝手に体が行動してしまう。いつの間にか家族や親友と彼の前では違うキャラを演じている。変わりたいわけではない。でもこのままではだめになるのもわかっている。中学生男女がひたすら刹那的なセックスにふける圧倒的に不快な映像の連続は、現実世界の居場所を実感できない彼らの気持ちを象徴していた。

上級生にフラれた小梅は磯部と初体験を済ませる。3年になっても、父が不在がちな磯部の家に入り浸っては、ふたりは体を重ね合う。ある日、磯部は海岸で拾ったSDカードからかわいい女の子の画像を見つける。

小梅の幼馴染・鹿島は彼女に好意を抱いている。真面目な野球少年でもある鹿島は、小梅と磯部との仲を薄々感じていて、不愉快でたまらない。少し前に都会から引っ越してきた磯部は地元になじめずいまだ友達もいない。さらに兄を亡くしたトラウマから、この田舎町を嫌っている。夢とか希望とか、大人がいくら言っても心に響かない。だからといって不良になるのはダサいと知っている。人生の目的が見つからず探そうともしない。そもそも探し方もわからない。そんな、健全さから取り残された中学生たちの実りの少ない日常がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

夢中になれるものがない。反抗するほどの気力もない。セックスするのもただ人肌が恋しいだけ。もう高度成長期は歴史の彼方、未来に明るい展望を持てない21世紀の日本に生まれ、これからも生きていかなければならない少年少女の彷徨は、切ないまでの哀しみを背負っていた。鹿島の明るさだけが救いだった。

監督  ウエダアツシ
出演  石川瑠華/青木柚/前田旺志郎/中田青渚/倉悠貴/村上淳
ナンバー  104
オススメ度  ★★*


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http://umibe-girl.jp/