こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャングル・クルーズ

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知恵も勇気も好奇心も行動力も並みの男たちを圧倒的に凌駕する女は、バッグひとつでジャングルの奥地に乗り込む。現地のガイドは体格がいいけれどどこか胡散臭そうな男。物語は、秘宝を求めてアマゾンに向かう研究者とクルーズ船を操る船長の冒険を追う。目的のためには手段を選ばず博物館からの窃盗も辞さないヒロインはさながらインディ・ジョーンズ、はしごや滑車を巧みに使って逃げ足は速い。借金で首が回らない船長はギミックと口先でその場しのぎを繰り返す。そんな2人の道中はスリル満点のアクションに満ち溢れ、息つく間もなく波状攻撃を仕掛けてくる。子供でも楽しめるように刺激は控えめだが、もはや本物と区別がつかないほど精細なCGで再現された映像はアトラクションそのもの、スリリングな展開に現実を忘れさせてくれる。

癒しの力を持つといわれる奇跡の花を見つけるためにブラジルに渡ったリリーは、フランクを雇って複雑に入り組んだ大河をさかのぼる。その奇跡の花はドイツ人の潜水艦も追いかけていた。

飲食店に迷い込んだジャガー素手で撃退したり毒矢を吹き付ける原住民と交渉したりと、フランクは一見頼りになりそう。自己主張の強いリリーとは時に言い合いもするが、彼女に匹敵するほど強そうに見える。ところが少しずつフランクの秘密が明らかになるにつれ、彼のメッキがはがれてくる。一方でリリーはますます意気軒高、水以外に弱点はない。そのあたり、最近のディズニー映画に顕著なフェミニズムに阿った傾向が明らか。21世紀におけるマッチョのシンボルが顎でこき使われるようなエピソードの積み重ねは、男女の性差を不自然にゆがめている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“神の怒り” なのかどうか、フランクは特殊な肉体になっている。リリーの探し物は呪いをかけられた仲間たちがいる場所でもある。さらに潜水艦が細い支流に侵入してくる。入り江の水が抜かれ水底の建造物が現れて以降は、もはや何でもありのワンダーワールド。見世物としては興味深いが、映画としては奥行きが浅かった。

監督  ジャウム・コレット=セラ
出演  ドウェイン・ジョンソン/エミリー・ブラント/エドガー・ラミレス/ジャック・ホワイトホール/ジェシー・プレモンス/ポール・ジアマッティ
ナンバー  136
オススメ度  ★★


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