こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

返校 言葉が消えた日

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目が覚めると、そこはほこりだらけの教室。居眠りしている間にすっかり状況が変わっている。少女のすすり泣き、樹木の体をした巨人、片目をえぐられた男、壇上の首吊り死体etc. 物語は、人気のない夜の校舎に閉じ込められた高校生男女生徒2人が体験する恐怖を描く。悪夢であってくれと願っても感覚はリアル、直感は危険だと警報を発している。だが、どこに逃げてもないかに追いかけられる。校門を乗り越えて外に出てもその先はない。八方ふさがりの状況で、2人は自分たちの過去を顧みて何が起きているのか、なぜ起きたのかを探っていく。そしてたどり着いた真実。封印したはずの記憶がこじ開けられていく過程は、“貞子” や “伽椰子” など和製ホラーの流れをくむ演出、切れ味のあるショットの数々は背筋に悪寒が走る。

禁書を所持していた罪で逮捕されたジョンティンは厳しい拷問を受け、意識が飛ぶ。両親との折り合いが悪く家に居づらいレイシンは、チャン先生と密かに付き合っているが葛藤は消えない。

厳しい言論統制が敷かれていた時代の台湾、チャン先生は密かに学校内に禁書の読書会を作り、会員の生徒たちに持ち込んだ書籍の筆写をさせている。共産党のスパイ活動を防ぐ目的で管理官が常駐し、校内では自由な発言はできない。だがメンバーの不注意でレイシンに気づかれてしまう。ほどなく読書会は摘発される。いったい誰が密告したのか。そして逮捕されたものは厳しい取り調べを受け、時に死刑を宣告される。このあたり、共産党政権に対抗するためとはいえ、台湾にも暗黒時代があったと自省する姿勢は作り手側の映画人としての矜持なのか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

人気ゲームの映画化で、その世界観を忠実に再現していることがこの作品の売りなのだが、全体としてストーリーの展開に乏しくぶつ切りの映像を見せられている感じがする。映画として世に出すのならきちんと構成を練り直し、登場人物の感情を深く掘り下げるべきだろう。恋とか友情とか、青春のほろ苦く切ない思い出という切り口も欲しかった。

監督  ジョン・スー
出演  ワン・ジン/ツォン・ジンファ/フー・モンボー/チョイ・シーワン/リー・グァンイー/チュウ・ホンジャン
ナンバー  138
オススメ度  ★★*


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