判を押したように代わり映えのしない毎日、でもそれが自分の性に合っている。冒険なんてとんでもない、平凡な一日こそが最上の幸せだ。物語は、そんなゲーム世界のモブキャラが自我に目覚め、現実世界とリンクしていくうちに巨大な不正を暴いていく過程を描く。偶然サングラスをつけただけなのに、目に見える景色が一変する。プログラムされていないことはしないはずなのに、魅力的なキャラに惹かれてしまう。取り巻く環境の急展開に最初は戸惑うが、徐々に楽しむようになり、やがて使命感を抱くまでになる。彼の変化は、人生は他人の敷いたレールを進むのではなく、自らの意思と行動力で選択していくものであると教えてくれる。未来は厳しいものかもしれない、だがチャレンジ精神を忘れなければ克服できるのだ。
銀行員のガイは同じ時間に起きて同じ服装で同じコーヒーを飲むのが日課。勤務中に強盗が押し掛けるのにも慣れている。ある日、ガラス越しに見た美女に一目ぼれし、彼女を追いかける。
ガイはゲームの秩序を乱す存在として現実世界のプログラマー・キーズが送り込んだアバターに抹殺されそうになる。だが、このゲームの配信者でもあるキーズは、ガイが自律的に成長していることに気づく。キーズはさらに元同僚のミリーにもアドバイスを受け、ガイが単なるプログラムではなく自分が創造したAIだと確信していく。このあたり、ゲームにはそのクリエイターの世界観が濃密に反映され、普遍性の中にも彼にとっての真実が浮き彫りにされていくプロセスが丁寧に説明される。運命を引き寄せようと闘うガイこそがキーズの理想なのだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ガイはミリーのアバターと協力してキーズがゲーム内に隠した秘密を探る。モブキャラの権利を求めるガイの、次々と立ちはだかる障害を一つずつクリアし行く姿は、たとえゲームの中の出来事であってもつい感情移入してしまう。でも、いくら擬人化されていても所詮はプログラム、恋は抱きしめあいキスできる相手を選ぶべきとこの作品は教えてくれる。
監督 ショーン・レビ
出演 ライアン・レイノルズ/ジョディ・カマー/リル・レル・ハウリー/タイカ・ワイティティ/ジョー・キーリー/ウトカルシュ・アンブドゥカル
ナンバー 145
オススメ度 ★★★