あらゆる公権力を憎むだけではない。復讐の邪魔する者は、たとえ親分兄貴分であっても容赦しない。物語は、平和を取り戻した町に舞い戻ってきた大物ヤクザと暴力団組織を陰で操っている刑事の暗闘を追う。恨みを持つ相手は目玉をくりぬいてから殺す。義理も人情もないが、世界に対する怒りだけは誰よりも強い。良心など一片もなく、ただ自分が組織の頂点に立つことだけを考え日々謀略を巡らせている。敵対組織だけでなく警察とも全面戦争になっても余裕すら浮かべ、絶対に死なないと確信を持っているかのよう。自らを死に神と呼ぶこの大悪党を鈴木亮平が怪演、腕っぷしの強さと肝の太さが勲章だった古き良き時代のヤクザを体現していた。任侠道などすっかりすたれた現代の視点で見ると、活力あふれる映像は時代劇のような趣をまとっていた。
ピアノ講師惨殺事件の捜査官として召集された日岡はロートル刑事の瀬島とコンビを組み聞き込みにあたる。出所したばかりの上林に目星を付けるが決定的な証拠はなかなか見つからない。
一匹狼のはみ出し者で上層部の弱みを握っている日岡は、ヤクザと警察双方にとって目の上のたん瘤扱いされている。チンタというスパイを使って上林の動向を探らせているが情報は集まらない。そのうち、警察内部の奇妙な動きにも気づく日岡。裏切りと嘘、暴力と欺瞞に満ちた世界、誰もが生き残るために必死でもがいている。追い詰められた男たちの絞り出すような熱い吐息がスクリーンから滲み出すようだった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
直接対決のほかに、日岡と上林はそれぞれが同業者と戦わなければならない。似た者同士の日岡と上林、お互いを知っていく過程で相手に共感を抱くなんてことはない。それでも旧態然としたシステムに新しい風を吹き込もうとする心意気は、21世紀の日本にこそ必要なのではないだろうか。複雑すぎる人間関係の中では瀬島の存在が際立っていたが、公安の刑事はあそこまで完璧な偽装が出来るのか。なんか取ってつけたような後日談は、騙された気がしなかった。
監督 白石和彌
出演 松坂桃李/鈴木亮平/村上虹郎/西野七瀬/早乙女太一/渋川清彦/斎藤工/中村梅雀/滝藤賢一/宮崎美子/寺島進/宇梶剛士/かたせ梨乃/中村獅童/吉田鋼太郎
ナンバー 150
オススメ度 ★★★
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