こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

光を追いかけて

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転校したばかりの中学なのに、閉校になってしまう。やっと知り合った女子はUFOを信じる不登校の不思議ちゃん。物語は、農村の中学生が最後の文化祭に向けて友情を確かめ合う姿を追う。クラスになじめずにひとりで過ごしていた少年は大役を任される。いじめられっ子に声を掛けたら、妙になついてくる。家族ぐるみで付き合うようになったUFO女子は複雑な家庭環境。クラスのリーダーは何としても文化祭を成功させたいと願う優等生。一方で大人たちも悩みは尽きない。担任教師は教育に情熱が持てず転職しようかと悩んでいる。商売が成り立たなくなって借金を返済できない店もある。そして地元の農家は将来への展望が描けず苦悩する。そんな過疎地の問題がリアルに浮き彫りにされていた。豊かな田園風景をとらえたドローン撮影が美しい。

屋根の上に立つ真希を見かけた彰は彼女をスケッチする。その絵を見たクラス委員の村上は、彰に壁画を依頼する。真希は問題を起こして学校を長期欠席していた。

稲穂が実る田んぼにミステリーサークルを作って寝そべっている真希。下校途中通りがかった彰は彼女と仲良くなる。彰にとっても真希にとってもお互いが心を開ける初めての友人。UFOを信じているあたりも話が合う。そして真希は彰の絵のセンスに、彰は真希の民謡の歌声に敬意を抱いている。勉強や運動神経ではない芸術的な才能で共鳴し合うふたりは、中学生らしからぬ大人びた雰囲気を持っている。そのあたり、派手さはないけれど地に足をつけて生きようとする一生懸命さがまぶしかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

夜逃げした両親に見捨てられたうえミステリーサークルの秘密をSNSにさらされた真希は、文化祭準備中の学校に殴り込みをかける。そこで明らかになる、先生とクラスメートたちの真実。ひとりで生きていけるほど強い人間なんていない、人はみな誰かを頼り誰かに頼られている。ほとんどの住民は顔見知り、人と人の距離が近い田舎だからこその助け合いの精神が、クラス全員がUFOを見上げるシーンに凝縮されていた。

監督  成田洋一
出演  中川翼/長澤樹/生駒里奈/中島セナ/柳葉敏郎
ナンバー  129
オススメ度  ★★★*


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