こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

科捜研の女 劇場版

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“助けて” と口にして高所から飛び降りた女と男。自殺なのか他殺なのか、彼らの遺体と遺留品を詳細に検分すると奇妙な共通点が見つかるが、それらの点を結ぶ線が見つからない。物語は、2人の死を「事件」として調査する科学者と刑事の活躍を描く。ひとつ謎を解けばまた別の難題が立ちはだかる。強い関連が疑われる最先端技術開発中の科学者は、カルト指導者のような雰囲気をまとい弟子たちの心をコントロールしている。鉄壁のアリバイがあるだけにかえって怪しい。そんな男に挑むヒロインは超絶美人なのに色気は感じられず、年齢を重ねても表情は若々しい。そしてどんな感情も目を大きく見開くだけで表現する。彼女を演じる沢口靖子の存在感には圧倒された。いまだ少女のような清純派ぶりは、もはや吉永小百合の域に達している。

京都でウイルス研究者と細菌学者が相次いで不審死を遂げる。科捜研のマリコは殺人事件の可能性を疑う土門刑事とともに、夢のダイエット薬を開発中の科学者・加賀野に事情聴取する。

犠牲者2人の衣服から同じ成分が検出されたり、死の直前に同じスマホから電話を受けていたり、直前に加賀野と面会していたりしたことから、さらに事件性が増していく。一方、東京・八王子にある研究室では双子を使った人体実験が行われているなど、加賀野はマッドサイエンティストのにおいがプンプンする。こわもての土門が研究室や無菌室に土足でずかずかと入るシーンは、警察権力の横暴を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

俳優たちの演技は大げさでわかりやすく、セリフもすべて解説調。それらは、TVドラマからのファン向けの「お約束」なのだろう。非理系者というか、視聴者である60歳前後の専業主婦層にもきちんと理解できるような配慮がなされ、予備知識なしでも流れにはついていける。京都八王子間の空間的距離や、協力者が現れるタイミング、見え透いた伏線とどんでん返しといった、「映画作家」なら絶対にやらない演出がてんこ盛りで、こういう映像表現もあるのかと、ある意味楽しめた。

監督     兼崎涼介
出演     沢口靖子/内藤剛志/佐々木蔵之介/若村麻由美/風間トオル/片岡礼子
ナンバー     160
オススメ度     ★★*


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