こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ムーンライト・シャドウ

f:id:otello:20210916100727j:plain

やさしく包容力があり、どんな自分も受け入れてくれた。一緒に過ごした時間は大切な宝物だった。でも、彼は突然逝ってしまった。物語は、恋人に先立たれた女の再生を描く。彼には弟がいた。弟の恋人と彼は同時に死んだ。哀しみと喪失感を共有する2人は、いつしか死者との再会を願うようになる。穏やかな川と豊富な地下水脈、水が持つ不思議なパワーが奇跡を起こしてくれると信じて、思い出が過去に追いやられないように反芻する。愛する気持ちは死者に届くのか、彼らの魂はいつまで現世を彷徨うのか。もう過去に戻れない、事故をなかったことにできないのもわかっている。それでも、夜の闇が曙光にとって変わられるほんの短い間だけに起きる不思議な現象の中、きちんとさよならを言えなかった相手に対する姿は感謝の思いに満ちていた。

さつきは仲のいい恋人・等に、彼の弟・柊とその彼女みなこを紹介される。さつきは柊とみなことも意気投合、4人は料理や他愛ないおしゃべり、ゲームなどを通じて絆を深めていく。

由美子の死後、柊はまるで自身の中に彼女を取り込むかのようにセーラー服を着るようになる。さつきは等の手首に巻いた鈴の音が脳裏から離れない。2人とも自分の恋人を愛していた。というより深く慈しんでいたというべきだろう。恋人はもういないという事実を受け入れなればならないと理解はしていても、心がついてこない。“月影現象” について調べるうちに声を集める女の存在を知り、一度きりのチャンスに賭けようとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、感情を抑え気味にしたさつきと柊は、かえって何も抱えていない空虚さを感じる。柊は料理上手な設定なのに箸の持ち方がおかしいし、もみあげを長く伸ばした太眉のオッサン顔のままでセーラー服を着るのはお笑い芸人のよう。さつきが等の手首に巻いた鈴も動くたびにカチャカチャと耳障りな音を立てる。それは決して澄んだ心地よい音色ではない。死はすぐ隣にあるが、覚えていてくれる者がいる限り人生は無駄ではないという世界観は伝わってこない。

監督     エドモンド・ヨウ
出演     小松菜奈/宮沢氷魚/佐藤緋美/中原ナナ/吉倉あおい/臼田あさ美
ナンバー     164
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://moonlight-shadow-movie.com/