こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

レミニセンス

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その記憶の中の出来事は本当だったのか。それともそうありたいと願った情景が脳裏に焼き付いているだけなのか。物語は、他人の記憶を3D映像に再生することを生業にする男が運命の女に出会ったのを機に陰謀に巻き込まれる姿を描く。幸せな思い出に縋り付き現実から逃避する者もいる。警察は犯罪捜査に利用しようとする。だが、比較的新しい記憶は鮮明でも、心が勝手に上書きした記憶もある。主人公は己の直感を信じ女の行方を追うが、彼女の足跡は裏社会につながっている。低地が水没した近未来、金持ちだけが陸地に住み下層市民はボートでの移動を余儀なくされる。より広がった格差は現代社会の延長線上にあるように思えた。水上を滑るように走る列車は、「千と千尋の神隠し」のワンシーン思い出させてくれる。

失くした鍵を探したいというメイの依頼を受けたニックは、彼女と深い関係になる。その後、オフィスの前でメイのイヤリングを拾ったニックは、消息を絶ったメイを探し始める。

ある事件の容疑者の記憶を再現したニックは、そこにメイがいることに動揺、犯罪に巻き込まれたと確信して彼女を救出に向かう。メイは麻薬組織のボスと関係していてトラブルを抱えている模様。ニックは自ら繰り返し記憶再生装置に入り浸り、メイと過ごした時間を反芻し始める。入り混じる現実と偽りの記憶、幸せだった思い出こそがたったひとつ真実と信じたまま年を重ねた女が登場するが、彼女が抱える病と同じ種類の妄想がニックの心を蝕み始める。ただ、そのあたり「記憶の正確さ」がどのあたりまで信用できるものなのか設定が甘く、誰かを騙すために大掛かりな芝居をすれば、その記憶が事実と認定されてしまう可能性があるのではないか?

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

案の定、ニックはメイの背後にいる男の術中にはまり、彼らに踊らされている。それでも持ち前の行動力で社会の裏でうごめく勢力ともみ消された殺人事件を明らかにしていく。その過程はビジュアル的にはユニークだが、謎が謎を呼ぶ展開というにはディテールが甘かった。

監督     リサ・ジョイ
出演     ヒュー・ジャックマン/レベッカ・ファーガソン/ タンディ・ニュートン/クリフ・カーティス/ダニエル・ウー
ナンバー     166
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/reminiscence-movie/