こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パンケーキを毒見する

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野党議員の鋭い質問に対し、決して言葉を明瞭にせずのらりくらりと答弁する。官僚からのメモを読み上げるのも、国会での質疑応答ではおなじみの光景だが、みなマスクを着用しているので細かい表情まではうかがい知れない。カメラは ’20年9月、コロナ禍真最中に就任した総理大臣の動向を追う。元々、嘘をつかず有言実行の人だったと証言する国会議員がいる。だが、党内での権力闘争に勝ち残り、圧倒的な支持率を得ても、なかなかコロナ対策は進捗しない。やがてもろもろの問題が表面化すると国民にあきらめムードが漂い始める。映画は、この短命内閣の功罪を客観的に検証するのではなく,“権力の監視” というお題目の元、徹底的にこき下ろす。アニメや再現映像などを使ったその印象操作はすさまじく、もはや左翼のプロパガンダの域に達している。

安倍首相辞任後、総裁選挙に圧勝して第99代首相になった菅義偉。だが、コロナ対策失敗による緊急事態宣言の頻出や日本学術会議任命拒否問題などで野党から強烈な追及を受ける。

赤旗」といえば共産党の機関紙程度の認識しかなかったが、広告に依存せず購読料のみで運営し、純粋なジャーナリズムを標榜しているところには驚いた。全国紙が書かないネタもネット公開情報を丹念に調べ上げて裏を取る。さらに国会で小池共産党委員長がその事実を菅総理に突き付ける。共産党と「赤旗」が車の両輪のように機能し、与党や官僚による無駄遣いを追及するのだ。共産党が実権を握った国では例外なく言論は統制されマスコミは政府発表を垂れ流しにする。共産党が政権を取る心配がないからこそ「赤旗」の自由が保障されているという皮肉。それは、まだもう少しの間は日本の民主主義も大丈夫ではないかと思わせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、退官した元官僚に内調出身者の腹心を使って黙らせるやり方にはぞっとする。もちろん遠回しにほのめかすだけだが。それでもフィクションとしか認識していなかった出来事が当事者の口から語られると、やっぱりリアリティが違う。

監督     内山雄人
出演     石破茂/江田憲司/古舘寛治
ナンバー     168
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.pancake-movie.com/