こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

君は永遠にそいつらより若い

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就職先は決まった。単位もほとんど取った。卒論の目途もついた。後は適当に講義に出てバイトをするだけ。物語は、大学4年の秋を迎えた女子大生が、さまざまな出会いを通じて世界を見つめなおしていく過程を描く。容姿も性格も悪くないけれど、他人を慮る余裕がない。気軽に話せる友人は男女ともに多いのに深い話はしない。頭に浮かんだ思いをうまく言葉に変換できず、取っ散らかったことしか言えない。変わり者だが常識の範囲内にかろうじて収まっている彼女が、知人の死と親友の過去に向き合ううちに、薄々気づいていたけれど目をそらしていた大切なものに触れていく。大人から見ればゆる~い学生生活に違いないが本人たちにとってはグダグダ送る日々もまた刺激的、そんなヒロインを見ていると大学時代が懐かしくなる。

友人の代理で出席するはずだった講義に遅刻してノートを取れなかった堀貝は、居合わせた猪乃木に声をかける。2人はすぐ打ち解け飲み友達になる。猪乃木は過去に大きな傷を負っていた。

いまだ処女であることを負い目に感じながらも自虐的に楽しんでいるようなところがある堀貝。ゼミのコンパで知り合った穂峰に強引に迫ったり、バイト先の後輩・安田といい雰囲気になったりする。堀貝の方はOKなのに、男たちはあと一押ししてくれない。男友達から女として見られていない堀貝は、それが心地よい一方で物足りなさも覚えている。相手の気持ちがわからない雑な女と自覚している彼女に男の繊細さが理解できるはずもなく、まったく恋愛の対象にされていない。ジェンダーフリーを疑わずに育った女の現実。堀貝の非モテは、男らしさ女らしさを否定するリベラル教育の産物なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

突然穂峰が死に、猪乃木に大きな傷を見せられ、安田に童貞を告白される。何事もないように振舞っている友人たちが、実は大きな苦悩を抱えていたと知った堀貝。社会に出ればもっと大きな悪意や悲劇に出会うだろう。それでも何とかやっていけそうだと、少し成長した堀貝の大きな背中が語っていた。

監督     吉野竜平
出演     佐久間由衣/奈緒/小日向星一/笠松将/葵揚
ナンバー     170
オススメ度     ★★★


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