こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ディナー・イン・アメリカ

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誰に対しても不貞腐れた態度で下品な言葉を口にする男は、危険な香りを漂わせ、ある種の女にはモテる。少し頭の回転の鈍い女はいつも周囲からバカにされ、パンクバンドの絶叫に体をくねらせてはストレスを発散させている。物語は、そんなふたりが出会い行動を共にするうちに、真実にたどり着くまでを描く。世間の「普通」から大きくはみ出してしまった。自己チュー過ぎて仲間とも喧嘩別れ。行く当てのない男は職を失ったばかりの女の家に転がり込むが、そこでも白い目で見られる。平和な郊外の町、両親と子供たちという典型的な中流家庭の一軒家では、彼は異端者でしかない。一方で女も、どこにいても居心地が悪かった。彼と過ごした時間を「人生で最高の1日」と喜ぶ彼女の笑顔が、さえない人生を象徴していた。

治験施設で知り合った女の家に放火して逃亡中のサイモンは、ペットショップをクビになったばかりのパティの家に匿ってもらう。パティが自分のファンだと知ったサイモンは彼女に特別な感情を覚える。

刺々しいサイモンに周囲の人々は不快感を隠さない。それでも許容してくれる人にだけ心を開くサイモン。ところが、パティの弟にマリファナを勧めて仲良くなるなるなど、駆け引きもうまい。大人は信じないが自分より年下には理解を示す。そのあたり、わがままなアホとしか思えなかったサイモンが少しずつ魅力的に見えてくる。小道具やファッションから時代設定は1990年頃前後ろう、とんがった生き方をする若者がすっかり少数派になってしまった21世紀には、まだ自由を叫んでいられる彼らが非常に魅力的に映った。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

不器用なパティの背中を押し、今まで彼女をいじめてきた連中への仕返しの手助けをするサイモン。さえない日常が急に輝き始めたパティは、何度もサイモンに「これはデート?」問う。言葉を濁していたサイモンもいつしかパティといるのが楽しくなる。お互い、相手に必要とされているのが分かっていて期待に応えようとする。その信頼こそが愛だとこの作品は教えてくれる。

監督     アダム・レーマイヤー
出演     エミリー・スケッグズ/カイル・ガルナー/グリフィン・グラック/パット・ヒーリー
ナンバー     183
オススメ度     ★★★*


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