こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プリズナーズ・オブ・ゴーストランド

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追跡するために与えられたスポーツカーをあっさり乗り捨て、道端に止めてあったママチャリにまたがる男。大きな体に合わない車体、背中を丸めてぎこちなくペダルを踏む姿は滑稽かつシュールで、何か新しい体験をさせてくれるのではと期待させる。物語は、獄中の元銀行強盗犯が街の支配者の情婦を奪還する過程を描く。淫靡かつサイケデリックな色彩に満ちた遊郭から、文明が後退した廃墟の街までたどり着かなければならない。道中、残忍な力を持つ山賊の縄張りを越えなければならない。情婦を見つけるまで3日、連れ戻すまで5日の猶予しかない。さらに爆弾付きスーツを着せられ、逃亡や命令違反は許されない。ところが、主人公を取り巻く世界観は凡庸でディテールも安っぽい。全体的に作りこみが甘く、ため息しか出てこなかった。

サムライシティのガバナーからバニース探しを命じられたヒーロー。ほどなく事故にあい、怪しげな男たちがリヤカーでゴーストシティまで届ける。そこは時間を無理やり止めている街だった。

爆撃にさらされたかのような崩壊した建物。街の中心部に立つ時計台の時刻が進まないように、男たちはロープで秒針を引っ張っている。人々の身なりは貧相で、生産的活動はなされていない。硬質な薄板で全身をマネキン状に加工された人間の中で、ヒーローはバニースを見つける。だが彼女は声が出ず、ガバナーが仕掛けた生存確認装置が作動しない。やがてヒーローはゴーストシティの住民こそがガバナーの圧政から解放されるべきと知る。その際、原発問題などを強引に絡めているがそこに必然性はない。争いの原因となるものを明示していれば違った印象になったはずだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

バニースを無事保護してサムライシティに戻ったヒーローだが、爆弾スーツの解除鍵を渡してもらえずやむを得ず抗争となる。刀剣から拳銃、果てはガトリング銃まで使っての大殺陣が繰り広げられるが、ここでも凡庸なアクションに終始する。結局、最後まで演じる側の熱量が客席まで伝わってこなかった。

監督     園子温
出演     ニコラス・ケイジ/ソフィア・ブテラ/ビル・モーズリー/ニック・カサベテス/TAK∴/中屋柚香/渡辺哲
ナンバー     182
オススメ度     ★★


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