こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

最後の決闘裁判

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共に戦場を駆け回った友だった。信頼で結ばれていると疑わなかった。だが、美しい妻を汚されてしまった。物語は、妻をレイプされたと訴えた騎士が、無罪を主張する被告と決闘で真実を決める過程を描く。何があったかを知るのは当事者だけ、だがまだまだ女の権利が制限されていた時代、有力者の庇護がある被告の証言は有利に働く。法廷で根掘り葉掘り性生活を聞かれた妻は、それでも毅然とした態度を崩さない。同時に夫のプライドのために己の命まで賭ける羽目になった矛盾にも怒りを露わにする。それらのゴタゴタすべてを、王や貴族・民衆が娯楽を楽しむかのようににやにやしながら見ているのが印象的だった。神の意思が決闘の勝敗を決め判決となる、いかにも中世カトリック的な司法システムが驚きだった。

14世紀末、ジャンの出張中、ひとりで屋敷にいたマルグリットは、訪ねてきたジャックに襲われる。マルグリットはジャンに打ち明け、ジャンは密かにジャックを追い詰める算段をする。

地元の領主・ピエールに気に入られ、徴税吏として才覚を見せるジャック。戦場では勇敢なジャンは平時の農園を経営には向かず、台所は火の車。ピエールにも嫌われていてさまざまな仕打ちを受け、怒りは沸点に近づいている。レイプ事件は積年の恨みが爆発するきっかけ、もはや勝利か死かの二択に追い込まれたジャンの、封建社会における中途半端な地位が、後ろ盾のない “中間管理職” のつらさを象徴していた。一方で、マルグリットを嫌っている姑がこの事件に一枚かんでいるような気もするが。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

法廷では決着がつかない。ジャンとジャックは満員の闘技場で、重い甲冑を身にまとい長槍を持ち馬にまたがって真正面から相対する。鎧と槍が激突し打撃を受けても何度も突撃を繰り返し、馬が倒れたのちは剣や斧、ナイフを手に、相手が死ぬまで攻撃の手を緩めない。飛び道具を使わず、己の技量と体力・精神力だけで戦うシーンは圧倒的な迫力で、名誉のために命を懸ける男たちの強靭な精神を再現していた。

監督     リドリー・スコット
出演     マット・デイモン/アダム・ドライバー/ジョディ・カマー/ベン・アフレック/ハリエット・ウォルター/アレックス・ロウザー
ナンバー     188
オススメ度     ★★★★


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