こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロン 僕のポンコツ・ボット

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喜怒哀楽はもちろん、人間のあらゆる意思や行動を先回りして生活全般を快適にするAIロボット。中学生にもなると1人1台誰でも持っている。物語は、不良品のロボットを手に入れた少年が本当の友達とは何かを模索する姿を描く。友情でさえアルゴリズムに変換されている。忠実な執事のように寄り添っている。ところが、ネットに常時接続されているロボットたちの真の目的はあらゆる個人情報の収集。どこで誰がいつ何をやっているか、すべては記録され保存される。便利さと引き換えに手に入れたもの、それは強大な権力に監視され管理されるプライバシーのない未来なのだ。中国のようなハイテク強権国家ではスマホがその役割を果たし自由が奪われ続けている。いずれ人類にデジタル放棄が起きるのではと予感させる作品だった。

中学校でひとりだけB-ボットを持っていないバーニーは、人間の友達もおらずいつも孤独を感じている。父と祖母は不良品を手に入れ誕生日のプレゼントとしてバーニーに贈る。

バーニーはB-ボットにロンと名付ける。ロンは制御回路が壊れていてネットからも独立しているため、製造元は後を追えない。中途半端な自我を持つロンは、“好奇心” や “本能” などと人間が呼ぶ “情動” のようなプログラムが働いているのか、バーニーの命令を聞かずあちこちでトラブルを起こす。手間はかかるが一緒だと楽しい、そんな存在こそが本当の友達であるとバーニーは気づく。バーニーとロンの関係は対等になりやがてお互いが親友と認識し合うまでになる。AIが人間にとって代わる世界、断じて不幸だと思うのだが、デジタルネイティブ世代には抵抗なく受け入れられそうで怖い。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

メーカーはロンを回収しようとする。バーニーはロンとともに森に逃げる。もはやロンは人間と同じくらい尊い存在になっている。そして、上書きされたロンの “魂” を取り戻すためにバーニーは命がけのミッションに挑む。子供向けのアニメだからできる冒険、だがそこに込められたDX時代への警鐘は辛辣だった。

監督     ジャン=フィリップ・バイン サラ・スミス
出演     ザック・ガリフィアナキス/ジャック・ディラン・グレイザー/オリビア・コールマン/エド・ヘルムズ/ジャスティス・スミス
ナンバー     194
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/ron