こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンテベラム 

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広場には米国南北戦争時の南軍旗、メイド服を着た黒人女たちが真っ白なシーツを干している。畑では兵士に監視されながら黒人たちが黙々と綿花を摘んでいる。脱走を試みた黒人はなぶり殺しにされ焼却炉で処分される。白人兵たちの黒人への目を覆うような仕打ち。物語は、自由を奪われ強制労働させられる女と、人権派人気作家の運命を描く。労働中の私語は厳禁、破った者は有無を言わさず殴られる。南軍の祝勝会では、兵士たちは気に入った黒人女に夜の相手をさせる。黒人たちに人間としての尊厳は一切認められず、白人兵に命令されるがまま従うしかない。時に理不尽な暴力にさらされ命を失う者もいる。米国にかつて存在した悪夢のような制度を再現した映像は、黒人奴隷たちひとりひとりにも人生があったことを思い出させてくれる。

新たにプランテーションへ送り込まれたエデンは、将校服を着た白人に暴行された上に背中に烙印を押される。しばらくおとなしくしていたエデンだったが、密かに脱出のチャンスをうかがっていた。

スマホの着信音で目覚めたヴェロニカは人種問題を批判する新作も好評で、支持者からは圧倒的な賛辞を受ける。一方で意地悪そうな白人の取材を受けたりするが、嫌味な発言には慣れっこなのか軽く受け流す。講演旅行で訪れたホテルのコンシェルジュやレストランのウエイトレスなど、まだまだ黒人に対して明らかに見下した態度をとるが、21世紀になってもいまだにこういう人々が生き残っていることに驚きを隠せない。遠回しな嫌がらせではなくわかりやすい差別。ヴェロニカの友人の太った黒人が反論する姿は、偏見はひとつずつ指摘しなければ改まらないと教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、エデンとヴェロニカの関係が明らかになっていくが、それはM・ナイト・シャマランも真っ青の大どんでん返し。ただ、その設定はかなり無理があり、してやられたというより悪趣味な感じしか受けなかった。いかに偏執狂でも、あそこまで手間暇かけてコスプレをするのはリアリティに欠ける。

監督     ジェラルド・ブッシュ/クリストファー・レンツ
出演     ジャネール・モネイ/エリック・ラング/ジェナ・マローン/ジャック・ヒューストン/カーシー・クレモンズ/ガボリー・シディベ
ナンバー     202
オススメ度     ★★


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https://antebellum-movie.jp/