こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

恋する寄生虫

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モノや他人に触れた手を何度も洗わなければ気が済まない。原形をとどめていない食べ物を口に入れると戻してしまう。物語は、極度の潔癖症ゆえに社会から孤立して生きてきた男が視線恐怖症の少女と恋に落ち、その気持ちが本物かを確かめる過程を描く。研究の結果、彼らの頭の中には寄生虫がいると判明している。その働きが脳に影響を与え、ふたりは妄想に悩まされ続けている。だが、そんな彼らが出会ったとき、理解しあえるのはお互いに相手だけと知る。周囲になじめず居場所がない似たような境遇、世界のすべてに拒絶されていると感じている彼らは、さらに寄生虫の習性に振り回されていく。肉体的には健康なのにちょっとした脳内ホルモン異常で日常が歪んでしまう、心に病を抱えた人々の幻覚がリアルに再現されていた。

引きこもりのプログラマー・賢吾は、クリスマスにサイバーテロを計画している。ある日、見知らぬ男からひじりという女子高生に合えと命令される。ひじりもまた賢吾と同じ悩みを抱えていた。

ふたりの脳に寄生している虫は恋心に刺激を与える能力を持つ。賢吾とひじりは何度も面会を重ねるうちに忌避感が薄れ、もはや触れ合っても大丈夫なくらい症状が改善している。ふたりでいればもう世間は怖くない、もうそれはデートのような親密さを帯びてくる。この思いは虫の働きなのか、それとも自分の本心なのか。生まれて初めて湧いてきた感情に賢吾もひじりも驚き戸惑い恐れる。それでも己を信じたい彼らのぎこちない言動は、やさしさと思いやりに満ちていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、賢吾の潔癖症もひじりの視線恐怖症も、本来なら自室から一歩も外に出られず引きこもりのような状態になるはず。ある程度までは刺激に耐えられ、許容範囲内であれば何とかやり過ごせるが、限度を超えるとパニックになるのだろうか。そのあたりの初期設定があいまいで、世の中に順応できない言い訳を無理やりひねり出すような不自然さを覚えた。彼らの世界観を緻密に構築していればもう少し楽しめたはずだ。

監督     柿本ケンサク
出演     林遣都/小松菜奈/井浦新/石橋凌
ナンバー     208
オススメ度     ★★*


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