こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ボス・ベイビー ファミリー・ミッション

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幼いころはあんなに甘えてくれたのに、今ではすっかり敬遠されている。でもパパとして、娘の危機にはやっぱり一肌脱がずにはいられない。物語は、スマホアプリで世界征服を企む悪党ベイビーと、彼を阻止するために若返った兄弟の戦いを描く。中身は大人のままで外見だけが赤ちゃんや小学生になるという設定には驚かなくなったが、もう二度と戻れない子供時代へのノスタルジーはこの作品でも強烈。何も心配せずに目の前の楽しいことに集中できた時間の大切さを訴える。ところが、現代の教育システムでは勝ち組になることが最優先され、子供たちは学校で厳しい競争にさらされている。そんな社会で人間は本当に幸せになれるのか。兄弟で無邪気にじゃれ合ったり家族と過ごしたりした思い出、あたたかい感情が詰まった記憶こそが人生を豊かにするこの作品は訴える。

次女でまだ乳児のティナからアームストロング校長の陰謀を聞かされたティムとテッドは、若返りのミルクを飲む。ティムは長女・サビナのクラスに、テッドは乳児クラスに転入する。

もうキスもしてくれないほど大人びたサビナに、ティムは友人として接近する。家では見せないやさしい一面を知り、自分の育て方は間違っていなかったとホッとする。一方で、サビナは専業主夫に収まっていたティムより大企業のCEOになった叔父・テッドを尊敬しているなど事情は複雑。このあたり、愛に満ちた家庭か社会的経済的成功か、人生の目指すべき道はひとつではないと選択肢を示す。米国の強さの秘密は、10歳ぐらいで将来の目標を決め、チャンスは与えられるがあとは個人の努力次第というところにあるのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

優等生のサビナは致命的な音痴。それを矯正するためにティムは彼女のためにギターをつま弾き緊張しない発声法を指南する。そして発表会本番、アームストロング校長の計画が発動し、ティムとテッドはサビナを歌わせるか世界を救うかの二択を迫られる。個人と全体のどちらを優先すべきか、正解はない問いをこの作品は見る者に突き付ける。

監督     トム・マクグラス
出演     アレック・ボールドウィン/ジェフ・ゴールドブラム/アリアナ・グリーンブラット/ジミー・キンメル
ナンバー     210
オススメ度     ★★★


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