こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

囚人ディリ

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殴る蹴る投げる頭突きする関節をキメる押さえ込む踏みつぶすetc. 束になって襲ってくる数十人の荒くれ者たちをたったひとりで迎え撃つ主人公の大活躍は爽快だ。物語は、警察と麻薬組織の抗争に巻き込まれた元囚人の激闘を描く。数時間以内に多数の患者を町の病院まで運ばなければならない。おんぼろトラックで山道を突っ切ろうとするが、あちこちでギャングが待ち伏せている。味方はけがをした署長とデリバリーボーイのみ、役に立つどころか足を引っ張っている。圧倒的不利な状況で、男は唯一の願いをかなえるために決死の覚悟を決める。主人公だけでなくサブキャラの心情まで丁寧に解説する映像はいかにもインド映画らしい。もどかしさもあるが、細かい矛盾をねじ伏せるような力強さがこの作品にはあった。

郊外の別荘でパーティに出席した警察官が毒を盛られ、隊長のビジョイ以外が意識不明になる。5時間以内に治療しなければ命がないと知ったビジョイは手錠で繋がれた男・ディリに輸送を依頼する。

娘の元に急ぐディリだったが仕方なく患者を乗せたトラックのハンドルを握る。最初に現れたギャング一味を次々と素手で瞬殺していく過程は、洗練された格闘術ではなくすべて自己流のケンカ殺法。アクションとしてのスリルはないが、体重が乗った攻撃はまさしく相手を “ぶちのめす” という表現がぴったり。ナイフで切られ石を頭にぶつけられても怯まずに前進する姿は鬼神のようだった。背後から刺され戦闘不能に陥っても、娘への思いがエネルギーとなって奇跡の復活を果たすなど、非常に古臭い価値観をいまだ引きずっているあたりも、なんか憎めない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、ギャングは押収された麻薬の奪還のために別動隊を派遣、新任警官と学生たちが警察署に籠城して麻薬を守る。そちらの攻防戦でも、煮え切らない態度の者や、腹をくくる者、なかなか動かない者などさまざまな人間模様が交錯する。田舎町とはいえ、警察官が市民に対してすごく偉そうにしているのは、まだそういうお国柄だからなのか?

監督     ローケーシュ・カナガラージ
出演     カールティ/ナレーン/ラーマナー/ジョージ・マリヤーン
ナンバー     215
オススメ度     ★★*


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