こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ

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昼も夜も食事中も仕事中も、四六時中頭に鳴り響くこすれた金属音のような声。それは肉体に寄生するエイリアンの咆哮であると同時に、彼自身の心の叫びでもある。物語は、エイリアンと肉体を共有する男が、残虐な死刑囚と対峙する姿を描く。本体とケンカした後仲直りを申し入れられても拗ねる。いつもは超強気なのに凶悪そうな同類が現れると腰が引ける。そんなエイリアンは、恋や仕事のために本音を隠して生きる主人公の魂そのもの。殺人鬼に対する憎しみも暴力への渇望もすべてエイリアンが引き受けてくれるため、彼は善良な人間でいられるのだ。分離したエイリアンが仮装パーティでクールと称賛されても対応に困るあたり、エイリアンもまた誰かに頼らないと生きていけない。喜怒哀楽を共にできる相手がいてこそ人生は楽しいと彼らは教えてくれる。

死刑囚のクレタスに面会したエディは指をかまれ出血する。ヴェノムの血はクレタスの狂気に反応し、カーネイジという怪物に成長する。クレタスは脱獄して恋人のフランシスを捜し始める。

フランシスは破壊的な超音波を発する能力があり厳重警戒の精神病棟に隔離されている。孤児院にいたころふたりだけの世界に浸っていたクレタスとフランシス、精神を病み社会から排除されてきた彼らのような存在にこそ人間の真実が隠されているのではないかという問いを、ジャーナリストであるエディは深堀りはしない。それでも、元恋人のアンを巻き込んでしまった呵責からヴェノムとともにクレタスの憎悪を受けて立つ。このあたり、もはや価値観の基準をどこに置くべきかあいまいで、誰に感情移入してよいかわからない。多様性が正義とされる現代の混迷を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エディ&ヴェノム対クレタス&カーネイジの最終決戦は、フランシスやアンも巻き込んで壮絶なバトルとなる。ただ、その動きはCG感満載で、細密に表現されるほど映像が薄っぺらくなっていく。人間の捕食は厳禁、チキンとチョコレートしか食べられないヴェノムには哀愁を覚えたが。。。

監督     アンディ・サーキス
出演     トム・ハーディ/ミシェル・ウィリアムズ/ウッディ・ハレルソン/ナオミ・ハリス/リード・スコット/スティーブン・グレアム/ペギー・ルー
ナンバー     221
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.venom-movie.jp/