こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

MONOS 猿と呼ばれし者たち

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足元に雲海が広がる高地、コンクリートむき出しの無機質な建造物が少年少女たちを睥睨するように立っている。小柄な上官の命令のもとで、彼らは肉体を鍛え銃を構え兵士として訓練されていく。物語は、人質を見張り世話をする任務に就いたティーンエイジャーたちの日常を描く。上官が去った後は彼らだけで任務を遂行しなければならない。あどけなさの残る少年もいる。家族はいない。学校にも行かない。まだ前線に出ることはないけれど、いつかは小銃を手に戦闘員として戦わなければならない。おそらくそんな覚悟もないまま組織に入ったのだろう。規律を叩き込まれた彼らは、命令を実行する。文明から切り離されたサバイバルキャンプのような環境で撮影された映像は、雄大な自然の中で繰り広げられる人間の争いごとの卑小さを象徴していた。

8人の少年少女は博士と呼ばれる女性を監禁し見張っている。ある日、ドッグが酔っぱらって銃を乱射し、上官から預かった乳牛を殺してしまう。リーダーのウルフはドッグを監禁する。

乳牛事件とウルフの死の真実がうやむやのまま山のアジトが攻撃を受け、残った7人と博士はジャングルの奥深いキャンプに移動する。そこでは水も食料も豊富にあるのか、少年少女兵も博士も生気を取り戻していく。彼らのうちの3人が野生のキノコを食べてハイになるシーンは解放感に満ち溢れ、初めてきらめいた笑顔を見せる。世間と隔絶された世界で死と隣り合わせの毎日を過ごす、発展途上国にはまだまだこんな若者たちがいることに衝撃を禁じ得ない。上官の命令で総括を強要されチクリ合いになるあたり、精神的に成長していない彼らの甘さが感じられた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

博士は脱走を試みるが失敗、露見を恐れたビッグフットは無線機を壊す。その後、連帯にひびが入り始め規律が緩みだす。博士と接するうちに、もっと違った生き方があると知ったのだろう。崩壊していく価値観に抗う術はない。かといって軍規違反は処罰を受ける。命がけの激流下りは、久しぶりに映画ならではのスリルを味わえた。

監督     アレハンドロ・ランデス
出演     モイセス・アリアス/ジュリアンヌ・ニコルソン/ ソフィア・ブエナベントゥラ/フリアン・ヒラルド
ナンバー     222
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
http://www.zaziefilms.com/monos/