こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ローラとふたりの兄

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堅実なようで詰めが甘い長兄。人前では強がっているが実は繊細な次兄。喧嘩ばかりしている兄二人の仲を取り持つ年の離れた妹。手のかかる息子たちと面倒見のいい母親のような関係、3人そろっての墓参りは毎月欠かさない。物語は、地方都市に暮らす3兄弟妹の腐れ縁を描く。長兄は、商才はあるが女の気持ちがわかっていない。次兄は多忙を理由に人間関係を壊しがち。妹は弁護士としては優秀だが男に夢を持てない。ことあるごとに連絡を取り合い、迷惑をかけあったりお互いの身の上に起きるトラブルを協力して解決しようとしたり、面倒くさがっているようでいて実は肉親の情にあふれている。中年になってもなお子供のころのような関係を続けていられる彼らの絆がうらやましい。兄弟の、空気を読まない言動の数々には息をのむ。

ブノワの結婚式に遅刻したピエールはさらに花嫁の名を間違えるが、後日ローラの仲介で仲直りのパーティが開かれる。一方、仕事上のミスでピエールは失業するが誰にも言い出せない。

ローラが、新しい恋人ができたと兄たちに報告すると、祝福するどころか彼らはそろって不快感をあらわにする。かわいがっている妹が他の男のモノになるのはイヤ。いくつになっても妹の恋に口出ししたくなる兄たちの幼稚なメンタリティが笑わせてくれる。そんな、ドタバタではなく言葉の端々に皮肉をにじませつつも、日常生活のさざなみをちょっと盛って再現するエピソードの数々は小気味よい。特に現金払いの老人がもたついて渋滞を起こすシーンは、日本のスーパーでもよく見かける光景だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、後半は笑いを取りに行ってるのが透けて見える不自然さが目立つ。ブノワのように失礼な接客を繰り返していたら店はつぶれるだろうし、ピエールのように頑な態度を取り続けていれば愛想を尽かされるはず。50年前のコメディを見ているような現実離れした設定は少しつらかった。まあ、自分の肉体的な秘密を知ったローラがブノアの赤ちゃんに対面したときの気持ちはリアルに共感できたが。。。

監督     ジャン=ポール・ルーブ
出演     リュディビーヌ・サニエ/ジョゼ・ガルシア/ジャン=ポール・ルー/ラムジー・ベディア/ポーリーヌ・クレマン
ナンバー     225
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://senlisfilms.jp/lola_and_bros/