横たわるブタの脇から1頭また1頭と子ブタが現れる。ちょこちょこ歩き回る者、わら山に頭を突っ込む者、母ブタの上に乗る者……。子ブタたちはみな母ブタの乳首を探している。母ブタの乳首は6対、生まれてきた子ブタたちも12頭、乳首は頭数分あるのになかなかうまく母乳を吸えず、他の子ブタを押しのけたり下に潜り込んだりと、早くも熾烈な生存競争が始まる。カメラは家畜たちに密着、かれらの日常を追う。ブタもウシもニワトリも、カメラとカメラマンの存在を意識するような反応は一切見せない。なのにカメラは常に家畜たちの動きに寄り添い、息遣いが聞こえる距離で撮影を続けている。陰影の濃いモノクロの映像は効果音や音楽・人間の言葉を排し、やがて食肉処理されるかれらの運命を哲学的に見つめているようだ。
子ブタたちに授乳しながらも餌を食べ、昼寝をし、泥浴びをする母ブタ。放し飼いにされているニワトリはフェンスに気づくがその先には行けない。放牧されたウシはのどかに草をはむ。
ブタたちは板でできた豚小屋に閉じ込められることはなく、壁に空いた穴から自由に農場に出られる。敷きわらも清潔で、飼い主から虐待を受けている様子はない。当然かれらを襲う野生動物はおらず、短い草や土を掘り起こして虫など餌になる生き物を食べている。赤ちゃんのうちは母ブタにまとわりついていた子ブタたちも好奇心の赴くまま農場内を走り回っている。それでも、おなかがすくと母ブタの乳首を追いかけるあたり、愛情に満ちたほほえましい一面も見せてくれる。いつの間にか10頭に減っていたのが気になったが。2頭ななぜ死んだのだろうか?
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがてコンテナが豚小屋に接続され、子ブタだけを乗せて去っていく。1頭だけ残された母ブタは、子ブタたちを探して、ブーブー鳴きながら農場内を徘徊する。アニマルウェルフェアを訴えるわけでもなく、肉食の是非を問うわけでもない。解釈の余地を十分に残す母ブタの姿は、それでも命をいただくことに対する呵責を投げかける。
監督 ビクトル・コサコフスキー
出演
ナンバー 226
オススメ度 ★★★
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