牧場内を流れる川の水を飲んだ牛に異変が起きる。突然踊り出すかのように跳ね回り突進してくる牛を射殺せざるを得ない。当然食肉処理はされず敷地内に埋めるしかない。物語は、公害の被害を受けた住民のために戦う弁護士の姿を追う。相手は地元経済を支える世界的大企業、法曹界や公的機関・第三者機関まで抱き込み調査結果を隠蔽している。情報公開を求めると数百個の資料箱に入った書類を送りつけてくる。ひとつひとつ中身を確認しては証拠を探す気の遠くなるような作業。それでも、水質汚染の実態を知った主人公は一歩ずつ真相に迫っていく。そんな彼の地道な作業をカメラは丁寧に追い、膨大な資料を読み込み再構築し被害者に会い事件の全容を暴いていくプロセスに密着する。弁護士の理想を語る上司役を演じたティム・ロビンスが重厚な役割を果たしている。
デュポン社の廃棄物に牛を殺されたと訴える農場主・ウィルバーの依頼を受け、ロブは調査を始める。その過程でテフロン加工したフライパンは危険だと知り、訴訟は世間の注目を浴びる。
訴訟が報道されたのちウィルバーが食堂に入ると、店主も他の客も彼をはれ物扱いする。周囲の視線は、悪事を暴こうとして立ち上がったヒーローに対するものではなく、秩序を乱す厄介者に対するもの。ほとんどの住民が顔見知りという田舎町で目立った行動を起こすにはいかに勇気が必要かをリアルに再現していた。ロブも事務所内での反対を押し切ってデュポン訴訟にかかりっきりになるが、すぐに結果がでない長期戦、給料をどんどん減額される。さらに家庭を顧みない生活で妻との間にも隙間が生じる。いくら熱意があっても利益を出さなければ評価されない米国流のドライな考え方が印象的だった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ロブの努力のおかげでそこそこの成果は出るが、それでもデュポン社の不正義が正されたわけではない。住民の血液検査や賠償金を巡ってさらに時間がかかり、ロブは疲弊していく。日本でもテフロン加工された製品は売っている。大丈夫なのだろうか。
監督 トッド・ヘインズ
出演 マーク・ラファロ/アン・ハサウェイ/ティム・ロビンス/ビル・キャンプ/ビクター・ガーバー/ビル・プルマン
ナンバー 230
オススメ度 ★★★*
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