こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

夕方のおともだち

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縛られ吊るされ打擲され釘を打たれる。体中があざだらけになり、苦痛に顔をゆがめながらも口の端から愉悦を漏らす。物語は、夜な夜なSMクラブに通っては胸の奥に閉じ込めた本当の自分と対話しようとする男の葛藤を描く。至極の快楽を教えてくれた女王様はもういない。代わりのSM嬢とは何度プレーしても心がとろけるような体験は得られない。女王様との思い出をトレースしようとするが、もうあの瞬間は二度と味わえないと落胆するばかり。昼間はおとなしい公務員、家に帰れば寝たきりの母を介護しなければならない。唯一生きていることを実感できるのは、肉体が痛めつけられている時間だけ。そんな思い通りにならない人生、一瞬の解放感を味わうために女王様を探し続ける主人公の孤独がリアルに再現されていた。

水道局に勤めるヨシオは同僚の誘いを断りSM嬢・ミホに責められる日々。最近プレーのノリが悪いとミホに言われるが、ヨシオは自分を調教してくれたユキコ女王様が忘れられなかった。

ヨシオはミホを居酒屋に誘う。ミホはヨシオの話に真摯に耳を傾け、彼の事情を知る。ところが、話が盛り上がってきて、ミホがその気になったタイミングで、ヨシオはあっさりと解散を告げる。ヨシオとなら今夜ヤッてもいいと思っていたのに、はしごを外されたミホ。女から抱いてくれとなかなか言い出せないもどかしさが微妙な表情によく表れていた。ヨシオにとって緊縛プレーこそが最高のお仕置き、女との普通のセックスでは満足感が得られない。マゾ男の基準はよくわからないが、少なくとも命の危険を覚えるほどのプレーは通常の射精よりもはるかに充足できるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ユキコ女王様が街の戻ってきたという噂を聞いたヨシオは、彼女が選挙カーのウグイス嬢をしているのを見つける。そして、もう一度だけあの恍惚に浸りたいと願う。寒い海に放置され、海水を飲み込みそうになりながらもじっと耐える。ヨシオの、 もがき苦しみながらも癒されるような表情は、人生に対する彼の向き合い方を象徴していた。

監督     廣木隆一
出演     村上淳/菜葉菜/好井まさお/鮎川桃果/田口トモロヲ/烏丸せつこ
ナンバー     232
オススメ度     ★★★


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