テロか事故かそれとも陰謀か。ローター回転音のわずかな周波数の乱れを聞き分けられる鋭敏な耳を持つ男は、墜落した旅客機のフライトレコーダーの内容に違和感を覚える。物語は、航空機等の音声分析官が、ブラックボックスに残された音声を手掛かりに巨大な秘密を暴露していく姿を描く。簡単に解決できたはずだった。上層部も幕引きを願っている。ところが、フライトレコードが明らかに改ざんされた証拠が出てくる。責任者はなぜか失踪、己の聴覚と直感を信じた主人公はさらなる深い闇の奥に突き進んでいく。自分のやっていることは正しいのか、単なる思い込みではないのか。葛藤を抱えつつも関係者をあたり少しずつ真実に近づく過程はスリリングかつサスペンスフル。久しぶりに骨太のミステリーに出会えた。
墜落機調査班の班長・ポロックがフライトレコーダーを持ったまま消息を絶つ。後任を託されたマチューは、コピーされた音声のなかにイスラム過激派の叫びを見つける。
山岳地帯に散らばった残骸の中からオレンジ色に塗装されブラックボックスを回収、ラボで開封する。墜落の衝撃に耐えられるように何重にも梱包されたフライトレコーダーを取り出すシーンは緊迫感満点。むき出しのプリント基板だったのと、それをPCにコピーする装置が割と普通で却って驚いた。マチューは犠牲者の遺族から提供された音声からポロックの関与を疑い証拠集めを始める。その際、ポロックの車載カメラの映像を再生するが、日常の行動が記録され保管される現代社会において、プライバシーはどこまで保護されているのかと恐ろしくなった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
さらに、妻にも遠因があると知ったマチューは人生をかけた行動に出る。あらゆる機械がAIとネットワークの支配下のもとで自動化され、人間の知識や判断、技能がほとんど不要になっていく。だがそれは、悪意を持った人間にハッキングされる可能性も秘めている。マチューのクルマが運転中に急に制御を失って暴走するシーンは、すぐにも現実になりそうで恐ろしかった。
監督 ヤン・ゴズラン
出演 ピエール・ニネ/ルー・ドゥ・ラージュ/アンドレ・デュソリエ
ナンバー 16
オススメ度 ★★★★
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