こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パイプライン

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地中深くに埋められたパイプラインに穴を開け石油を盗む男たち。トンネルを掘り、作業場を確保して、薄皮一枚残すようにドリルする。穴からつないだチューブに、タイミングを見計らって石油を通すシーンは躍動感にあふれていた。物語は、貯蔵基地から送られる石油を強奪する犯行グループの葛藤を描く。警備警戒は厳重ではないが、下手なことをしたらかえって目立つ。腕の立つリーダーの男の周辺を嗅ぎまわる警官もいる。依頼主は規律に厳しく失敗は許さない。そんな状況で偽装と腹の探り合いを繰り返しながら、彼らはトンネルを掘り続ける。損失の穴埋めとぼろ儲けを企む経営者、這い上がるには犯罪に手を染めるしかない労働者、安定はしているがこき使われる公務員。格差社会が凝縮されたキャラ設定が現代韓国の現状を象徴していた。

大規模な盗油計画を任されたピンドリは3人の専門家とともにホテルの地下から石油パイプラインに向かって横穴を掘り始める。各々プライドが高くなかなかチームはまとまらない。

ピンドリは伝説的な腕を持つ穿孔技術者だが、他のメンバーを見下すためになかなか信頼を得られない。そんな中、年長のナ課長が潤滑油役になるが、彼もまたさまざまな事情を抱え仕事に集中できない。依頼者のゴヌが契約時に、高額の報酬と引き換えに決められた規則をきちんと守れと念を押したにもかかわらず、個人的な事情を持ち出してくるのは覚悟が足りないのではないか。案の定、反抗的なチョプセもわがままを言いだし、掘削作業は暗礁に乗り上げる。このあたり、シリアスにするのかコミカルで行くのかあいまいで、非常に中途半端なトーンの映像が続く。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ピンドリたちはさまざまな困難に直面しながらも、偶然見つけた遺構から盗油を謀る。だが、あまりにも非人間的なゴヌに対してピンドリたちは反乱を起こす。そこにゴヌが雇ったチンピラたちや間抜けな警官も加わって、事態はさながらドタバタ喜劇の様相を呈する。もっと、ノワールな犯罪映画を目指してほしかった。

監督     ユ・ハ
出演     ソ・イングク/イ・スヒョク/ウム・ムンソク/ユ・スンモク/テ・ハンホ/ペ・ダビン
ナンバー     28
オススメ度     ★★


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