こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナイトメア・アリー

初対面であっても、身なりや表情、ちょっとしたしぐさや癖を注意深く観察し、少し会話すれば相手がどんな人生を送ってきたかわかる。もちろん頭の中では膨大なデータがきちんと分類されていて、新しい情報と参照しつつ記憶している。物語は、見世物小屋で読心術を学んだ男がたどる欲望と転落の運命を描く。無一文で転がり込んだカーニバルの一団で、彼は温かい食事と乾いた寝床のためにきつい肉体労働をこなす。強烈な視線を送る数十の目玉の奥のらせん模様のトンネル、死産児の標本、小人や獣人、電気女に怪力男。胡散臭い芸人たちが集うカーニバルは、怖いもの見たさというゲスな好奇心を刺激する。そこは社会の底辺というよりも交わってはいけないパラレルワールド、ディテール豊かに再現された異形の世界は悪夢の中をさまよっているようだった。

心霊占いショーの芸人と親しくなったスタンは、秘伝の教本を手に入れ自らの才能を磨く。その後、通電ショーの女・エリーをパートナーにして独立、洗練された心霊ショーで人気を得る。

新たな職場は町はずれのテント小屋ではなく高級ホテルのディナー会場。まだ超常・心霊現象が信じられていた時代、客たちはちょっとしたトリックに簡単にひっかかる。ある日、リリスという女心理学者にトリックを見破られそうになるが、一瞬の機転で事なきを得る。それを機にスタンはリリスに接近、2人で一儲けしようと提案する。この一連の流れは、実は有能な詐欺師を探していたリリスの方がスタンを試し、スタンが接近してくるように餌を撒いたということなのだろう。スタンは次々とセレブに食い込み、カネを産み出していく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

言葉巧みに金持ち連中の心をつかんだスタンは、指折りの大富豪・エズラから依頼を受ける。常に警備人が目を光らせる中、スタンはリリスから得た情報をもとにエズラの心の奥深くにある自責と後悔を探り出す。このあたり、騙しているのは誰か、騙されているのは誰か、真実と虚構の中で揺れ動く登場人物の心理がリアルに再現されていた。

監督     ギレルモ・デル・トロ
出演     ブラッドリー・クーパー/ケイト・ブランシェット/トニ・コレット/ウィレム・デフォー/リチャード・ジェンキンス/ルーニー・マーラ/ロン・パールマン/メアリー・スティーンバージェン/デビッド・ストラザーン
ナンバー     58
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://searchlightpictures.jp/movie/nightmare_alley.html