中途半端なまま大人になってしまった。もう若くないことに気づいてしまった。現実を直視するほどに未来には暗澹たる気持ちしか湧いてこない。物語は、うだつの上がらないまま中年にさしかかった男たち2人が、現実逃避のためにオープンカーに乗って旅をする姿を描く。気の向くままにハンドルを操り、適当なところで止める。一応、火の鳥を探すという名目はあるが、真剣なわけではない。それでも彼らが移動の途中で出会ったさまざまな奇人変人とのかかわりは、人生とは体験してみないとわからないことばかりであると教えてくれる。失うものは何もない。怖いもの見たさと好奇心、ワクワクしている自分たちが意外にまだまだイケると思えてくる。そんな彼らの、熱くはないけれど強い絆は、バカ話できる幼馴染との友情ほど尊いものはないと訴えていた。
農道で農夫ラッパーに絡まれたり、ビーチでハンバーガーを食べたりしながらドライブを楽しむ草太と楽人。夜になり怪しげなスナックに入ると、奇妙なショーを見せられた上泥酔する。
白塗りのギョロ目男とおかっぱ頭のおばば、ハチマキサングラスのオッサンの3人がカウンターの向こうにいるスナックで、草太と楽人は気まずい空気に耐えながらまずいつまみを食べさせられる。客なのに恐縮して、店員の機嫌を取っている。なのにお勘定を言い出せない。常連が来たかと思うと昼間のラッパー。楽しく飲むはずの酒がいつの間にか苦行の時間になっている。一見さんお断りの店に入ってしまったよそ者の居心地の悪さが非常にリアルに再現されていて、彼らが抱いたアウェイ感には共感できた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、映像に落書きを入れてみたり、オチのない思い出話に延々ふけったり、大した驚きもない伏線を張ったりと、薄い内容を無理に盛っている感は否めない。旅を通じて成長するわけでもないし、しみじみとした情感を得るわけでもない。脱力感こそがこの作品の魅力なのは理解できるのだが、笑いにまで昇華しきれておらず、中途半端な印象しか持てなかった。
監督 かなた狼
出演 井浦新/成田凌/紗羅マリー/LiLiCo/津田寛治/奥田瑛二/火野正平
ナンバー 70
オススメ度 ★★
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