こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バブル

重力の束縛から逃れた泡や建物のがれき、クルマや電車までが空中を漂っている。巨大なドームで覆われた町は水没し、アウトローたちの居住区になっている。そこで繰り広げられる、目くるめく競走競技。物語は、超人的な身体能力でこの世界のスーパースターになった少年が、命を救ってくれた少女と交流していくうちにコミュニケーション能力を獲得していく過程を描く。少女は猫のような身のこなしの上スピードも圧倒的だが、日本語はできずマナーも身についていない。それでも自分の名前から覚え、本を読んでもらううちに感情を言葉で整理していく。一方で少年の相棒としてたちまち頭角を現し、なくてはならない戦力に成長していく。パルクールのスリルと飛翔を体感させてくれる映像は自由と開放感に満ち、肉体を使って躍動する喜びに満ち溢れていた。

試合中に水に落ち溺れたたヒビキは泡から形を変えた少女に救われる。ウタと名付けられた少女はヒビキにまとわりつき、ヒビキもウタにパルクールのテクニックを教える。

聴覚過敏ゆえに他人との距離を縮められないヒビキ。彼にだけ聞こえていた音を、ウタも感じている。それは宇宙の果てから別次元を通過して届いたかのような調和のとれたメロディで、ヒビキはそれに己の運命が導かれていると信じている。発信源であるタワーにどうしても行かなければならない。それにはウタや仲間の協力が不可欠。素直に感謝を口にすることが対人関係の基本であるとヒビキの行動は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、パルクール競走に強化服を着て参戦するのはルール違反ではないだろうか。さらに強化服集団は科学者を拉致してレースの賞品にするなど狼藉を働く。自主的に管理されているからこそこういったルール違反には厳格に対処すべきなのに。また、この作品における水没した東京と、138億年に及ぶ宇宙の歴史を結びつけるのもいささか強引。映像のクオリティは高く世界観もユニークだっただけに、もう少し練りこんだストーリーを展開させてほしかった。

監督     荒木哲郎
出演     志尊淳/りりあ。/広瀬アリス/宮野真守/梶裕貴
ナンバー     88
オススメ度     ★★*


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