こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

東京2020オリンピック SIDE:B

強行するか延期にするか。“現実を直視して愛せ” の言葉に象徴される、ここまで来たのに今更引き返せるかという固い決意が会議出席者全員で共有される。開催費用はすべて税金、決して自腹を切らされることのない無責任体質が凝縮されていた。映画は、コロナ禍のなか開催された東京五輪の事務方たちの葛藤を追う。既存の施設を有効利用せず、競技団体の要請に応じるままに次々と大きな箱モノが建設されていく。委員会のオッサン・オバハンたちはそれが正しいと信じ、膨れ上がった大会経費には関心を寄せない。さらに金満五輪の権化ともいうべきIOC会長のたびたびの来日。当初の宣言通りコンパクトな大会ならこれほどの批判は受けなかっただろう。だが組織委員会出席者たちの悪相を見ていると、やっぱり失敗だったという感想は否めない。

競技会場や関連施設が次々と出来上がるが、2020年3月、世界的パンデミックで1年延期が決定される。すでに来日していた南スーダン選手団は前橋市で身動きが取れなくなる。

延期が決まるとパートナーシップ契約を解除しようとする企業が出始める。その対処法を森喜朗に記者が問うと、“バッハ会長がチャーター機で来日したことに共感しろ” と答える。日本側に湯水のようにカネを使わせる男がまたもチャーター機で来日することへの国民の反感を全く理解していない森の的外れな回答には思わず失笑してしまった。女性は話が長い発言で上げ足を取られて記者会見でキレ、森は組織委員長を辞任する。結局開催反対派も、首相時代の歴代最低の支持率だった森に対するある種のうさん臭さを感じ取っているのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

頑張ったスタッフや選手の姿をあえて感動的にとらえることはせず、開閉会式チームの空中分解やバッハ広島訪問への抗議活動、バドミントン百田、水泳瀬戸、400mリレーなどの惨敗をあえて取り上げる。だが、全体的にテーマとしてまとまっているわけでもなく取り留めのない印象。この映画も、東京五輪の負のレガシーとして受け入れるしかないのだろうか。

監督     河瀬直美
出演     
ナンバー     117
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://tokyo2020-officialfilm.jp/