こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

神は見返りを求める

多大なカネと労力をつぎ込んで手伝ってやったのにちょっと売れると見向きもしなくなった女に腹を立てる中年男。ダサいセンスを押し付けてきただけなのに恩着せがましく付きまとう彼から離れたい女。物語は、そんな2人の齟齬が大きくなり感情的に暴走する過程を描く。男にとっては、駆け出しの娘を育てているような楽しみだった。一生懸命な彼女の成長が退屈な日常に刺激を与えてくれた。性的な展開も少しはあったが、見栄を張ってしまった。だが、プロの洗礼を受けたとたん、彼女の才能は開花する。素人っぽい二番煎じのアイデアでゆる~い動画を配信していた彼女が、洗練されたユーチューバーに変貌していく姿はまさにシンデレラ。ユーチューバー業界はネタのために日々知恵を絞り体を張る厳しい世界、中途半端な覚悟では生き残れないと訴える。

飲み会で優里と知り合った田母神は、彼女の動画制作に協力する。ところが、優里が人気ユーチューバーやデザイナーと組むようになると、あっという間に視聴者数が激増する。

一応、田母神は動画編集もできるがふた昔前のレベルで、優里の動画は違法行為で炎上した時以外は見向きもされない。広告代理店勤務だが独身で職場でもイマイチな田母神は、自分を頼ってくれる優里に好意や愛とは違う独占欲を持ち始める。しかし、優里はもはや田母神を必要とはしていない。新しく組んだディレクターに田母神がこき使われるシーンは、流行を追う業種は常にアップデートしていないと時代に取り残されることを象徴していた。中途半端に古い知識や技術は、失笑の対象にしかならないのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

借金に苦しむ田母神は優里に広告料の分配を求めるが断られ、2人の亀裂は決定的になる。お互いの信頼が、憎しみに変わっている。優里ともつながりのある田母神の後輩若手社員が双方に相手の悪口を吹き込み泥仕合は過熱する。執念が怨念になった田母神と平気で彼の気持ちを踏みにじる優里。2人のキャラが特異すぎる一方で、この若手社員の存在がリアルだった。

監督     吉田恵輔
出演     ムロツヨシ/岸井ゆきの/若葉竜也/吉村界人/淡梨/柳俊太郎
ナンバー     118
オススメ度     ★★★*


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