こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベイビー・ブローカー

一度は育児放棄した女と、その子を売ろうとする男たち。カネ払いがよくきちんと育ててくれる里親を捜して、おんぼろバンに乗って旅をする。物語は、赤ちゃんポストに預けられた乳児を巡って、ブローカー一味と彼らを尾行する刑事たちの葛藤を追う。主犯格の男はできるだけ愛情濃やかな里親を見つけようとする。従犯の若者は赤ちゃんが将来抱く気持ちを理解している。若い母親は情が移らないようにわが子と距離を置いている。違法行為に手を染めていても、彼らは赤ちゃんを第一に考えて行動している。人身売買といっても被害者はいないwin-win関係、いつしか彼らは疑似家族のような信頼関係で結ばれていく。一方で彼らを追う刑事2人組が、何日間もクルマの中で過ごすうちに法の限界と無力感を募らせていく皮肉が効いていた。

サンヒョンとドンスは、ソヨンが捨てた赤ちゃん・ウソンを盗むと、ソヨンが戻ってきたことから事情を話し仲間にする。サンヒョンたちが里親候補との交渉に臨むと、ソヨンが口をはさんでくる。

ドンスはサンヒョンの下で働きながらも、この仕事を嫌悪している。赤ちゃんの世話はしないのにずうずうしい態度をくずさないソヨンには特にいら立ちを隠さない。ソヨンもまたドンスの境遇を見下している。バンで旅し、小さなホテルに宿泊するうちにお互いの過去を知り誤解が氷解していく過程は、相手を理解し共感することが人間関係の基本であると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、郷愁あるディテールを描くのが特徴だったこれまでの是枝作品とと比べると、おおざっぱな印象は否めない。彼らを追う刑事たちがバレバレの距離で尾行・張り込みをしているのも気になった。クリーニング店を営むサンヒョンがソヨンの服のボタンを縫い付けてあげるシーンだけはこだわりが感じられたが。日本で製作された作品のようなきめ細やかさには欠けるが、それでも、人の思いは行動を変え、変えた行動はまた人の思いに影響していくという感情の連鎖は、まだ他人を信じてもいいという気持ちにさせてくれる。

監督     是枝裕和
出演     ソン・ガンホ/カン・ドンウォン/ペ・ドゥナ/イ・ジウン/イ・ジュヨン
ナンバー     116
オススメ度     ★★★


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