こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台

ずっと待っていた。これからも待ち続ける。それが希望だから。物語は、フランス地方都市の刑務所矯正プログラムで演劇を指導することになった俳優と、彼の指導の下に舞台に立つ囚人たちの葛藤を追う。人種も年齢も出身もさまざま、一癖も二癖もある犯罪者たちを前に、ひるんではいけない。だが、上から目線で接してもバカにされるだけ。彼らに戯曲の意味を理解させ、セリフを覚えさせ、役を演じさせるには、対等の人間としてぶつかり合わなければならない。猿の鳴き声に始まり、腹から発声する練習、少しずつ身体性を持たせていく過程は、ただ刑期を終えるまでの時間をつぶす以外にすることのない囚人たちにとって新鮮な体験。いつしか彼らは芝居中の人物になり切って演じる喜びを知る。目標を共有する仲間を持つことが人生を豊かにするとこの作品は訴える。

ゴドーを待ちながら」を演目に選んだエチエンヌは、集まった囚人たちに役を割り当てる。最初は反抗的だった囚人たちも、エチエンヌの熱意にほだされ真面目に稽古に励み、初公演を迎える。

囚人たちは舐められないように虚勢を張っている。それでも、演じるためには己の内面をさらけ出す必要があると知ると、少しずつ丸くなっていく。懲役刑を受けたとはいえ根は善良な男たち、全員で協力しなければ演劇が成立しないことを学ぶと、自然にチームワークが生まれてくる。彼らが人間的に成長するとともに、売れない役者だったエチエンヌもまた自分の中に新しい感情が芽生えているのに気づく。価値観がまったく違う者同士が触れ合うことで生まれる化学反応が楽しい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

囚人劇団の初公演は好評を得て、次々にオファーが舞い込みツアーが組まれるまでになる。もちろんトラブルも起きるが、エチエンヌの粘り強い交渉で解決していく。そして決まったパリ公演。問題をひとつずつクリアして夢のステージを目指し、でもやっぱり本番直前に深刻な事態に見舞われる展開は手あかのついたパターンだったが、斬新な処理に思わず喝采を送りたくなった。

監督     エマニュエル・クールコル
出演     カド・メラッド/ダビッド・アヤラ/ラミネ・シソコ/ソフィアン・カメス/ピエール・ロッタン/ワビレ・ナビエ/アレクサンドル・メドベージェフ/マリナ・ハンズ
ナンバー     102
オススメ度     ★★★*


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