こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソー ラブ&サンダー

灼熱の砂漠で幼い娘と2人迷ってしまった。身を隠す日陰はなく、強烈な渇きに肌はひび割れる。神のご加護を待つうちに娘は力尽きた。やっと救いの声が聞こえてきたと思ったら、現れたのは信じるに値しない陳腐な神。物語は、あらゆる神に復讐を誓った男の怒りを鎮めるために立ち上がったヒーローたちの活躍を描く。なぜか元カノがコスチュームに身を包んでパワーのシンボルを手にしている。武器を借りようと訪ねた全知全能の神はへそ曲がりで意地悪。登場するキャラクターはみな神なのに感情も行動も人間臭い。一方で憎しみに満ちたヴィランは純粋な目的を持っている。善悪の境界線などなくなって久しいが、戦う意味や目的を失った男がやる気満々の女に尻を叩かれながらやっと本気を出すという構図はコミカルだ。

ゴッドブッチャーとなったゴアは神々を虐殺し、ソーが召喚される。末期がんのジェーンはソーのハンマーからパワーを手に入れ、マイティ・ソーとなってソーと合流、ゼウスの元に向かう。

ハンマーは今やジェーンが操り、ソーの元には戻ってこない。その代りに大斧をふるっている。元々神々の惑星に住んでいたはずなのに、今やすっかり人間化したソー。彼に比べ、物理学者として有名なジェーンは人間の時はやつれているのに、変身するとソー以上の身体能力を発揮する。著作の内容を聞かれ、事象の地平面については「インターステラー」を参考しろと答えるが、あの映画で描かれたブラックホールの内部は最先端の物理学者も納得する映像だったのかと、改めてクリストファー・ノーランの慧眼とクリエイティビティに驚かされた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ゴアにさらわれた子供たちを救出するために、ソーとジェーンはヴァルキリーと共に宇宙を奔走する。その過程は雑然としていて方向性がよく見えず、ただ騒がしいだけ。信じられるのは、いや信じるべきは愛だけという思想も、予定調和的で新鮮味はなかった。もうそろそろ「アベンジャーズ」の初期メンバーは卒業してもらってのいいのではないだろうか。

監督     タイカ・ワイティティ
出演     クリス・ヘムズワース/クリスチャン・ベール/テッサ・トンプソン/ジェイミー・アレクサンダー/ラッセル・クロウ/ナタリー・ポートマン/ クリス・プラット/デイブ・バウティスタ/カレン・ギラン
ナンバー     125
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://marvel.disney.co.jp/movie/thor-love-and-thunder.html