こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

海上48hours 悪夢のバカンス

夜更けまで酒を飲んで大騒ぎする5人の若者たち。踊り明かすと空になった酒瓶を砂浜や道路に放置する。その段階で誰が死ぬのか予想はつくが、果たしてホラーの定石どおりに展開する。物語は、彼らが卒業旅行で訪れた南国のリゾート地でサメに襲われる過程を描く。乗ってきたジェットスキーは故障して動かない。大けがをして動けない者がいる。助けを呼ぼうと勇気を振り絞って海に入る者もいる。冷静にリーダーシップをとる者もいる。一方で無力な者もいる。水中から見上げるアングル、突然水面に現れる尖った歯の並んだ大きな口、何度も戻ってきては襲撃を繰り返す執念。なにより水面から浮かび上がった時のサメの質感。さまざまなディテールに「JAWS」への熱いオマージュがこめられ、奇妙な懐かしさを覚えた。

物乞いの老人から警告されたにもかかわらず、2台のジェットスキーを無断借用するトム、タイラー、グレッグ、ミリー、ナットの男女5人組。根性試しをするうちにジェットスキーを衝突させる。

ジェットスキーの1隻は沈没、もう1隻もエンジンがかからなくなる。スマホは圏外、グレッグは足を骨折する重傷で大量に出血している。脛骨の断面が飛び出した彼の脚は激痛を感じられるほどリアルで、スクリーンを正視できない。なんとかジェットスキーに引き上げるが、血の匂いを嗅ぎつけたホオジロザメが早速彼に襲い掛かる。目視しただけで5メートルほどの体長、背びれで水面を切りながら泳ぎ徐々に近づいてくる姿は、まさしく人食いザメ映画の王道だ。その後もひとりまたひとりと落命していく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

太陽が容赦なく照り付けるジェットスキーの上、水も食料もない。サメに襲われる以前に体力を消耗し、海水を飲もうとする者までいる。サメの恐怖以上に苦痛をもたらす強烈な渇きに人間は耐えられるのだろうか。下半身を食いちぎられた死体が沈んでいくシーンは、クイント船長が語ったインディアナポリス号事件の話にアイデアを得たのだろう。この作品いちばんの見どころだった。

監督     ジェームズ・ナン
出演     ホリー・アール/ジャック・トゥルーマン/キャサリン・ハネイ/マラキ・プラー=ラッチマン
ナンバー     139
オススメ度     ★★★


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