こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

野球部に花束を

たった2歳しか違わないのに、3年生が怖い顔のオッサンに見える。チンピラのような外見と話し方の監督には、雲上人として敬意を示さなければならず命令には絶対服従。物語は、公立高校野球部に入部した新入生の苦難の1年を追う。学校にいる間は野球部員として行動し絶対に気が抜けない。わずかな粗相も2年生に怒鳴られる。背筋を伸ばして腰を45度曲げ、大きな声で挨拶しなければならない。許される返事は「ハイ」だけ。それでも、叩き込まれた礼儀作法や相手の側に立ってモノを考えるという習慣はきっと将来に役立つと信じられている。甲子園常連でもない普通の野球部なのに、まるで軍隊のような規律がいまだに引き継がれていることに驚いたが、そのディテールにはいちいち共感し懐かしさを覚えてしまった。

高校デビューするつもりだった鉄平だったが、薫田、亀井、森、桧垣らとともに体験入部に参加する。本入部が決まるとグランドに集められ、バリカンで強制的に丸坊主にされる。

お客様扱いだった1年が、いきなり奴隷のようにこき使われる。監督のパワハラ説教だけでなく2年からの細かい指導もある。それらすべては試合に出る選手が野球に集中できる環境を整えるための気遣いであることを1年たちは学んでいく。練習の合間につるんでは愚痴を言い慰め合い励まし合うのは通俗だが、そもそも甲子園を目指すレベルとは程遠く、努力や友情を高めて勝利を得るというありふれたアプローチはとらない。21世紀になっても残る野球部の因習は世間の逆風にさらされてはいるが、それでも少年たちを人間的に成長させる機会になっているとこの作品は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

夏の大会、3年の引退、新チームの結成と時は流れ、鉄平たちが2年になると、また同じようなことが繰りかえされる。部員は入れ替わっても伝統は守られるのだ。エキセントリックな監督が、一度だけ部員に手を上げる。それは野球や生活態度の乱れに対してではなく、仲間に嘘をつかせたことへの怒り。怖い先生ほど生徒思いなのかもしれない。

監督     飯塚健
出演     醍醐虎汰朗/黒羽麻璃央/駒木根隆介/市川知宏/三浦健人/里崎智也/小沢仁志/高嶋政宏
ナンバー     148
オススメ度     ★★★


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