こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Blue Island 憂鬱之島

天安門事件から30余年、当時の活動家だった男はいまだに深い敗北感にさいなまれている。まだ自由への渇望は消えたわけではない。だからこそ新天地に活路を見出そうとしたのに、そこでも権力に抑え込まれようとしている。映画は、香港の民主化運動が当局の取り締まりによって縮小していく現状を告発する。一時は世界に向かってアピールできたかに思えた雨傘デモ、だがその後中国寄りの行政長官の赴任や政治犯に対する厳しい法律の施行など、北京政府は徐々に民主化勢力を削いでいく。そして始まった本格的な弾圧。文革期、毛沢東思想から逃れるために、命がけで山を越え林を抜け海岸から泳いで香港島を目指した祖父母世代は、独裁者の手に落ちようとしている第二の故郷にどんな思いを抱いているのだろうか。

2019年ころから頻発している香港の騒乱に警察が出動。バリケードは突破され、催涙弾が飛び交い、歯向かうものは警棒で殴打された挙句後ろ手に縛られて道路に座らされる。

「香港を開放しろ!」夜の静寂を破って時折聞こえる叫び。誰の声なのか特定できない。返還前から住んでいた人も、返還後移住してきた人も「50年は守られる」はずの約束が反故にされる過程を現在進行形で体験している。きっと最初は先進国から支持を得られると思っていたのだろう。ところが北京政府は強硬に介入してくる。犠牲者を出さないためには撤退せざるを得ない。認めたくはないが運動は挫折した。そしてその状況に慣れてしまう。“信念の最大の敵は時間” という言葉が半ばあきらめと共に発せられる。高く掲げた理想は蝕まれ、活動家たちが次々と恭順していく映像は、ひとつの時代が終わったことを象徴する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、直近の香港で起きた事件と、過去を再現したフィクションが散文的にちりばめられた構成は、とりとめのない印象。登場人物も多くて脈絡がなく、実在する人物と彼らの若いころを再現した映像が混在する。それでも、香港の自由というテーマが貫かれ、彼らが味わった危機感にはリアリティがあった。

監督     チャン・ジーウン
出演     チャン・ハックジー/ラム・イウキョン/アンソン・シェム/シウイェン/フォン・チョンイン
ナンバー     150
オススメ度     ★★*


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