自宅の目の前は海、朝一番に潜れる。住民はみな顔見知りばかり、やさしくしてくれる。同級生は少ないけれど、友達もすぐにできた。祖母・母との3人暮らしはあわただしくても不自由はない。物語は、瀬戸内海の小さな島で暮らす小学生の少女の成長を描く。父の酒癖のせいで両親は離婚、東京から引っ越してきた。ビルもなく小舟で本土まで渡らなければならないほど不便だが、身近に自然にあふれているのが気に入っている。それでも、ふとした瞬間につらかった記憶がよみがえる。若くてきれいな先生、絶対に笑顔を見せない学校用務員、剛毅だが正直な漁港の男たち、噂話に花を咲かせる女たち。善良な大人や素直な友人たちに囲まれて、繊細だった少女の心が他人を思いやる気持ちを育んでいく過程が心地よい。
診療所の医師である祖母と看護師の母に育てられている凪。男子2人と登校する仲だが、渡し船の青年・浩平が担任の瑞樹先生に恋をしていると知り、一計を案じる。
全学年合わせても10人ほどの小学校で教える瑞樹もまた、埼玉出身で島の住民にとってはよそ者である。ところが、四六時中好奇心にさらされるような息苦しさを感じるよりは、開放的な気候と濃厚な人間関係をむしろ気に入っているよう。若者が少なく、未婚女性などほとんどいないこの島ではアイドル的存在に違いない。凪と同級生の雷太はなんとか浩平と瑞樹を接近させようとする。その間、雷太の母をめぐって小冒険が繰り広げられたりもするが、一見平和な島でも、人々はみな深刻な問題を抱えていることが露呈していく。それらを解決するには、新しい風を入れアクションを起こさなければならないと凪の行動は訴える。代り映えしない平凡な日常でも、きちんとメンテナンスしなければ保っていけないのだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そして、はしけの上で挙行される海上結婚式。1972年のヒット曲「瀬戸の花嫁」がいまだに歌い継がれているのには驚いた。子供向けの内容の映画でリアリティより雰囲気を優先するが、その分穏やかな気分になれる作品だった。
監督 長澤雅彦
出演 新津ちせ/島崎遥香/結木滉星/加藤ローサ/徳井義実/嶋田久作/木野花
ナンバー 152
オススメ度 ★★*
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