こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アキラとあきら

父の失敗を目の当たりにした経験から他人の役に立ちたいと願う青年。親族間の醜い争いの中で育ち他人を信用できなくなった御曹司。大手銀行に同期入行した2人はそれぞれの宿命に向かって進む。物語は、人情派の熱血漢と冷めた目で世界を見る男のライバル関係を描く。正直に働いている人たちと共に歩むのが銀行員の仕事という信念と正義感は、時に足枷となる。それでもめげずに地味な仕事からやり直す青年の姿は、社会に役立つ仕事とは何かを教えてくれる。きれい事だけでは通用しないのはわかっている。だが、人間として守らなければならない一線は必ずあるはず。銀行の利益よりもまず取引先を信じようとする彼の生き方はまぶしすぎる。一方のライバル行員の抱える葛藤は、血縁だからこそのしがらみが生々しかった。

新入社員研修で伝説となった瑛と彬は順調にキャリアを積んでいく。数年後、瑛は銀行の利益よりも顧客の預金を守ったために田舎町の支店に左遷される。

大手海運グループ社長の息子でもある彬は、叔父たちが出資するリゾートホテル計画に、銀行家の立場から反対する。経営センスもないのに手を出した無謀な事業、やがて家業を継いだ弟までトラブルに巻き込まれる。このあたり、悲惨な家庭環境に育ちながらも思いやりのある大人に成長したわかりやすいキャラの瑛に比べ、本当はやさしい子供なのに大人たちの強欲さを見せつけられ家族すら信じられなくなった彬の対比が鮮やかだ。あくまでも好青年な瑛を演じる竹内涼真に対し、善意や良心が弱点となるのを恐れ冷徹な鎧で隠そうとする彬の心理を横浜流星が繊細に再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エリートコースに復帰した瑛は、弟の代わりに社長となった彬の担当となり、経営立て直しのための秘策を練る。融資を通すためには何人もの管理職に稟議書を回し印鑑をもらわなければならない。さらに、計画を受け入れてもらう相手を探すために日本全国に足を運ぶ。その非効率なほどの煩雑さは、情報を自分の目で確かめることの大切さを訴えていた。

監督     三木孝浩
出演     竹内涼真/横浜流星/高橋海人/上白石萌歌/児嶋一哉/塚地武雅/宇野祥平/奥田瑛二/ユースケ・サンタマリア/江口洋介/戸田菜穂/石丸幹二
ナンバー     156
オススメ度     ★★★*


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