こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

さかなのこ

ハコフグの帽子をかぶって街に出没する男は、地元では変人扱いされている。彼は、小学生を自宅に招き夜まで一緒に遊んでいたのが警察沙汰になりパトカーで連行されていく。その背中には、地方の小さなコミュニティで孤立した男の生きづらさが凝縮されていた。物語は、お魚博士になると決めた主人公の成長過程を追う。家でも学校でも頭の中は魚のことでいっぱい。あふれるイマジネーションをイラストにすると好評になる。一方で、思考回路が “お魚” 中心に回っているために他人とのコミュニケーションがうまく取れない。絡んできた不良たちに一歩も引かず持論を展開させ逆に不良たちを納得させるシーンは、話のかみ合わないコントのようで非常に楽しめた。強烈な思い込みは、時として周囲を変える可能性を持つとその姿に教えられた。

水族館のタコに夢中になったミー坊は、魚類図鑑を愛読するうちに魚が大好きになる。高校は底辺校だったが、特異なキャラで総長やヒヨといった不良たちとも心を通わせるようになる。

ミー坊の言動に一切否定的な態度を示さず好きにさせる母親の育て方が素晴らしい。ギョギョおじさん事件後離婚してミー坊を引き取ったようだが、ミー坊が不自由さを感じないように全力を尽くしている。高校卒業後は魚に関連する仕事に就こうとするミー坊だが、魚を釣ったり観察したり調理したりするのは得意で何時間でも集中できるのに、他人に命令されると途端に散漫になり、何をしても長続きせず職を転々とする。それでも、お魚博士になる夢はあきらめていない。ヒヨの恋人に笑われるなど、ある種のパーソナリティ障害のように描かれているが、本人は気にしておらずむしろ個性と肯定的にとらえているあたり心地よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ミー坊の生き方を美化しすぎていて、コメディとしても間が悪い。最終的には夢をかなえるのだが、そこに至るまでの苦悩や葛藤も再現してほしかった。さかなクンというユニークな存在がいかに稀有で偉大であるかという事実だけは理解できたが。

監督     沖田修一
出演     のん/柳楽優弥/夏帆/磯村勇斗/岡山天音/井川遥/さかなクン/西村瑞季/宇野祥平/豊原功補/中須翔真
ナンバー     167
オススメ度     ★★*


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