こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビースト

愛する家族を虐殺した人間たちを決して許さない。物語は、密猟からたった1匹だけ生き残った雄ライオンの復讐を描く。夜の保護地区でいきなり自動小銃を撃ってきた。メスも子供たちもみな犠牲になった。人間とは一定の距離を置いて共存してきたのに、一方的に破られた。ライオンがそう思ったかどうかはわからないが、群ごと殺された彼には、縄張りを荒らす人間は密猟者だろうと保護官だろうと観光客だろうと地元民だろうとすべてが敵に見える。逃げ遅れた者には飛びかかる。近寄る者には爪を立てる。銃を向けるものには牙をむく。もはや哀しみはない。憎しみだけを全身にたぎらせるライオンの姿は雄々しくもたくましい。自然界にとって、人間がいかにおぞましい存在かを教えてくれる作品だった。

南アフリカにサファリ体験に来たネイト一家は、友人のマーティンに案内されてサバンナをドライブする。途中立ち寄った村では集落のすべての人と家畜が雄ライオンに食い殺されていた。

ライオンはネイトたちのクルマにも襲い掛かる。間一髪車内に避難するが、クルマを暴走させてしまい運転不能になる。麻酔銃はあるが銃を構える間もなくライオンに突進される。身を守る武器はなく無線も故障、さらにネイトの娘2人が勝手な行動を取って余計な危機を生む。このあたり、マーティンはこの道のプロなのに備えが甘く、自分が別の群れのライオンを飼いならした実績を過信している。また、高校生くらいの長女・メアは自己主張が強くて蛮勇をふるい、10歳くらいの次女・ノラは脅えていた割には冷静に対処するなど、キャラクターにムラがある。絶体絶命の中で成長したと思いたいが、ご都合主義を感じずにはいられない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、密猟者と出くわしたネイトたちはどさくさに紛れて彼らのクルマを奪い、雄ライオンの縄張りを出て廃小学校に避難する。ところが、雄ライオンは執念深くネイトたちを追ってくる。ネイトたちは罰を受ける類の人間ではないが、ここまでくると雄ライオンを応援したくなった。

監督     バルタザール・コルマウクル
出演     イドリス・エルバ/シャルト・コプリー/イヤナ・ハリー/リア・ジェフリーズ/マーティン・マンロー
ナンバー     169
オススメ度     ★★


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