こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人生は二度とない

独身時代最後の旅は男だけで楽しみたい。それは、今までの人生を見つめ直す旅でもある。物語は、結婚式を控えた若者と彼の親友たちの3人が遠い異国をドライブするうちに、自分の心の底に眠っていた願望を再発見する過程を描く。ずっと先延ばしにしていた苦手なことにチャレンジしてみる。一歩踏み出せばまったく違った景色が見えてくる。それは、命の危険はないように配慮されているけれど、少し勇気が必要な体験。もう学生時代のころのように無邪気ではいられない。大人としての分別を持たなければならないことも分かっている。それでも失いたくない、若いころに抱いていた理想。いつしか日常に押し流され、こんなはずじゃなかったと思いながら本心に蓋をして過ごしてきた彼らが羽目を外す姿は刺激的だ。

カビール、アルジュン、イムラーンの3人は世界各地からバルセロナに集合、レンタカーでダイビングスポットを目指す。インストラクターのレイラにアルジュンは秋波を送る。

やり手金融マンのアルジュンは移動中も電話やリモートで打ち合わせに忙しい。そんな彼のスマホをイムラーンは捨て、旅に専念するように仕向ける。仕事に追われる日々は本当に幸せなのか、もっと大切なものがあるのではないか。彼らと時間を共にするうちに、アルジュンは少しずつ若者らしい溌剌さを取り戻していく。一方で、カビールの嫉妬深い婚約者がいちいち彼を拘束しようとして旅程に介入してくる。このあたり、男の気持ちを理解しない女だとウザく感じていたが、結婚するきっかけとなった事件が再現されると、むしろ彼女の不安がリアルで共感を覚えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、トマト祭り、スカイダイビング、牛追い祭りと、彼らはちょっとスリリングなイベントに参加しては、もう今後は得られないようなアドレナリンの噴出を体験する。そして、イムラーンが最も避けてきたけれどこれ以上は逃げられない事態に直面する。心の声を抑圧する生活を離れ、もう一度己の人生に必要なものは何かと問うことの大切さをこの作品は訴える。

監督     ゾーヤー・アクタル
出演     リティク・ローシャン/アバイ・デーオール/ファルハーン・アクタル/カトリーナ・カイフ/カルキ・ケクラン/ナスィールッディーン・シャー
ナンバー     205
オススメ度     ★★★*


↓公式サイト↓
https://spaceboxjapan.jp/jinsei/