こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シスター 夏のわかれ道 

自分の未来は自分でつかみたい。夢は誰にも邪魔されたくない。そんな時起きた思いがけない出来事。物語は、疎遠にしていた両親が交通事故死したことで、会ったこともない弟の世話を押し付けられた女の葛藤を描く。両親は男の子を欲しがった。進路も勝手に決められた。すべて女よりも男を優先させるという、古代から中国社会の隅々まで浸透してきた思想・習慣のせい。彼女は因習に強烈な拒否反応を示しながらも状況を受け入れざるを得ない。さらに、甘やかされて育った弟はわがままこの上なく、愛情などまったく湧かない。親戚たちが寄ってたかって彼女に弟を押し付けようとする中、麻雀ばかりしていぐうたらな叔父がさらにカネをせしめようとする。そのダメ男ぶりは、労働を貴ぶ社会主義プロパガンダが死んだ事実をリアルに再現していた。

医学部受験を目指している看護師のランは幼稚園に通うズーハンを引き取る。多忙な中、面倒を見るが、貴重な時間を取られたくないランは、ズーハンを養子に出す決意をする。

2人目を生む許可を得るために両親はランに障害者のふりをさせる。女は家族のために生きるのが当たり前と親戚に諭される。恋人とその家族も彼女を嫁扱いする。ロシアで一旗揚げようとした叔母も、家族のために商売をあきらめた過去を告白する。目に見える差別は撤廃され表向きはジェンダー平等なはずなのに、人々の意識はいまだに儒教思想にどっぷりつかっている。高層ビル林立する都市部でもまだこの程度なのだから、農村部はもっと保守的だろう。まあ、中国人の考え方が遅れていると考えるのは西洋的民主主義の傲慢な押しつけにすぎないが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

少しずつお互いに心を通わせるようになったランとズーハンだが、里親探しは順調に進む。たった一人の肉親、だが彼は足かせにもなりうる存在。ただ、その間に見せるランの心理描写は、間の取り方が非常に古臭くテンポが悪かった。ハッピーエンドに見える結末は、本当は別の選択をしたランが想像したもうひとつの人生だったのだろう。。。

監督     イン・ルオシン
出演     チャン・ツィフォン/シャオ・ヤン/ジュー・ユエンユエン/ダレン・キム
ナンバー     222
オススメ度     ★★*


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