こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グリーン・ナイト

王位を簒奪しよう、などという野望はない。人生の目的がわからず葛藤している、わけでもない。運命に選ばれ世界を救う発想など毛頭ない。ただ淫蕩にふけりその日を楽しみたいだけ。物語は、魔力を持つ騎士の挑戦を受けた若者が騎士との約束を果たす過程を描く。一人前の騎士になるための通過儀礼といえるのかもしれないが、苦難を共にする仲間も貴重なアドバイスをくれる賢者も登場しない。中世初期のイングランド、冬の空は陰鬱で光に乏しく、室内は蝋燭と松明の灯りしかない。それらは当時の環境をリアルに再現しているのかもしれないが、打ち捨てられた骸骨が象徴する「死」以外、ちりばめられたメタファーの意味はよく理解できず、ひたすら退屈で魅力のない主人公の冒険に付き合わされる。五感に訴えるような躍動感が決定的に不足していた。

御前会議に闖入してきた緑の騎士の首を刎ねたガウェインは、一年後のクリスマスに騎士の礼拝堂を訪ねる旅に出る。それは魔女でもあるガウェインの母の差し金だった。

森の中で追いはぎにあったガウェインは馬と緑の騎士から預かった大斧を奪われる。疲れ果て小屋で眠っていると女の幽霊が現れ、彼女の願いをかなえてやる。その後も、立派な城に客人としてもてなされ、主人夫婦の誘惑と闘ったりする。そのあたりの映像もクリエイティビティに欠け、想像力を掻き立ててくれることはない。ハラハラするようなスリルもドキドキする恋もなく、低調な展開がだらだらと続くばかりだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてガウェインは緑の騎士が待つ礼拝堂にたどり着く。約束を果たすためにガウェインは騎士に首を差し出すが、直前になってやめると逃げ腰になる。思い直して覚悟を決め、騎士が剣を振り上げたら、またやっぱりやめると情けない態度を取る。一応、旅の苦難を乗り越えてきたはずなのにまったく成長していないガウェイン。ちょっとばかり危険な目にあったくらいでは命がけの勇気が身につかないのは当然で、そのあたりはガウェインの心の弱さにむしろ共感すべきだったのか?

監督     デビッド・ロウリー
出演     デブ・パテル/アリシア・ビカンダー/ジョエル・エドガートン/サリタ・チョウドリー/ケイト・ディッキー/バリー・コーガン/ラルフ・アイネソン/ショーン・ハリス
ナンバー     223
オススメ度     ★★


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