こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

メイヘムガールズ

人生で一番輝いていなければならない時期なのに、マスク生活を強いられている。楽しみにしていた学園イベントは全部キャンセル、フラストレーションばかりがたまっていく。物語は、コロナ時代に生きる女子高生4人が突然超能力を手に入れ、倫理や正義感と葛藤する姿を描く。授業は退屈。クラスメートとの関係はぎこちない。先生は高圧的。両親は無理解。そんな状況で身についた不思議な力に、最初は戸惑い、徐々に慣れ、やがて使いこなしていく術を学んでいく過程は英雄譚にも似てテンポがいい。だが彼女たちを導く賢者はおらず、暴走を止められない。その動機が格差社会や環境汚染への抗議とかいじめっ子への仕返しという手垢のついたものではなく、ボーイフレンドの借金返済というのが、思慮の浅いイマドキのJKらしい。

クラス内のトラブルで念動能力を使った瑞穂はテレパシーを持つ環に声を掛けられる。そこに瞬間移動のあかねとプログラム改変力を持つケイが合流、4人は能力の使い方の研鑽に励む。

能力のことは隠しておかなければ大変なことになるのはわかっている。でもせっかく授けられたのだから何かに役立てたい。配達員として苦境をしのぐBF・祐介のために、はじめのうちは超速移動能力を使って配達を手伝う瑞穂だったが、手っ取り早く銀行強盗で彼の金銭的問題を解決しようとする。その意思決定の理由が “少年法に守られている” というのはあまりにも安易にすぎないか? 「選ばれし者」と自覚して世界を救うという大それた行動はしなくてもいいが、この程度のことにしか能力の用途が見つからない彼女たちの意識の低さは、凋落著しい21世紀日本のどっぷりとぬるま湯に浸かった若者を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

1度だけと約束したのに、その後も銀行強盗を続ける瑞穂を阻止しようとする他の3人。東京上空で繰り広げられるバトル映像は20年前のクオリティだった。特殊効果に走らなくてもいい、彼女たちの恋や友情に寄り添い喜怒哀楽を再現するなど、共感できる設定がもっとほしかった。

監督     藤田真一
出演     吉田美月喜/井頭愛海/神谷天音/菊地姫奈/木戸大聖/生稲晃子/大浦龍宇一/カンニング竹山
ナンバー     224
オススメ度     ★★


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