こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

散歩時間 その日を待ちながら

楽しいはずの新婚生活なのに、早くも溝ができている。修復しようと妻に気を遣う夫。本音で話さない夫にいら立ちを募らせる妻。物語は、結婚式を挙げられなかった夫婦のためのパーティに集まった友人たちが、ずっと抱えてきた現状への不満と未来への不安を吐き出すうちに希望を見出していく過程を描く。コロナ禍であらゆる行動が制限されている。それでもささやかなお祝いはうれしい。なのに些細なことで妻は不機嫌になる。夫は彼女に向き合わず無難な対応でやり過ごそうとしている。そんな夫婦の関係を友人たちは見抜いている。酒の勢いで指摘してさらに気まずくなったりする。平凡な人生を平凡に生きる、夫婦や友人、家族といった身近な人間関係を維持するにもお互いに努力が必要と、彼らの会話は訴える。

真紀子の家に集合した亮介・ゆかり夫婦と、稲田、圭吾の5人は飲み始める。夫婦の仲が微妙に険悪なのを他の3人は感じるが口に出せない。そんな時、稲田が電話で自分の妻と口論を始める。

亮介のバイト仲間だった3人に対し人見知りするゆかりを置いてコンビニに逃げる亮介。真紀子は気を遣って話しかけたりするが、稲田と圭吾はゆかりと共通の話題がない。さらにゆかりは聞いていなかった亮介の秘密を3人が知っていることにショックを受ける。恋人だった時はお互いのいい面しか見ていないのに一緒に暮らし始めると欠点ばかりが目に付く。結婚生活の理想と現実のギャップ、さらに世の中の停滞。感染者数の増減に一喜一憂し、やり場のない怒りやあきらめを心に溜め、それでも明日を信じようと懸命になっていたあの時期の空気がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

他にも、オーディションに向けて練習する配達員や妻子と離れて暮らすタクシー運転手、しし座流星群を観測しようとする中学生男女など、コロナ禍ゆえの事情を抱えた人々が人生に様々な疑問を持ちながら同じ空の下で同じ時間を過ごしている。こんなご時世、肩肘張って頑張るより力を抜いてみるのも大切だとこの作品は教えてくれる。

監督     戸田彬弘
出演     前原滉/大友花恋/柳ゆり/中島歩/篠田諒/めがね/ 山時聡真/川村鈴/アベラヒデノブ片岡つむりアベラヒデノブ/高橋努
ナンバー     189
オススメ度     ★★★


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